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松本大洋、浅野いにおら20人の漫画家が描く「東京」 漫画「もしも東京」展が開幕

大童澄瞳さんの作品「East East」

 漫画「もしも東京」展は、オリンピック・パラリンピックが開催される東京を文化の面から盛り上げるため、東京都と東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京が主催する多彩な文化プログラム「Tokyo Tokyo FESTIVAL」の中核事業のひとつ。2020年夏に開催予定でしたが、新型コロナウイルスを理由に延期となっていました。

 展示されるのは、“読む東京、歩く漫画”をコンセプトに、日本を代表する20人の漫画家たちが描き下ろした作品。『ピンポン』『Sunny』の松本大洋、『ソラニン』『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』の浅野いにお、『岳 ―みんなの山―』『BLUE GIANT』の石塚真一をはじめ、安倍夜郎、石黒正数、市川春子、岩本ナオ、太田垣康男、大童澄瞳、奥浩哉、小畑友紀、黒田硫黄、咲坂伊緒、出水ぽすか、萩尾望都、昌原光一、松井優征、望月ミネタロウ、山下和美、吉田戦車が参加しています。会場は2019年3月末にリニューアルした東京都立現代美術館の地下2階講堂、水と石のプロムナード、中庭の3カ所。点在する展示作品を巡るように鑑賞するのが、本展のスタイルです。

浅野いにおは新作漫画を展示

 地下2階の講堂には18の小部屋があり、18人の漫画家の制作した「もしも東京」の世界が広がります。松本大洋さんは詩人・萩原朔太郎の「青猫」で詠われる東京が好きだということから、詩に絵をつける試みをしています。

松本大洋さんの作品

 この日人気だったのが、浅野いにおさんの小部屋です。壁にあるのは描き下ろしの新作漫画「TP」。浅野さんは将来の人たちにとって今の東京はノスタルジックなものになると考え、構想を得たといいます。主人公は、近未来の平凡なカップルかと思いきや……この後、想像を超える展開に。「TP」は衝撃的な結末を迎えます。

浅野いにおさんの小部屋

「暗殺教室」「約ネバ」作者の作品も

 小部屋を出て周囲を見回すと、路地を探検しているような気分に。中でもひときわ目をひく大きなロボットのイラストを見つけました。『暗殺教室』(「週刊少年ジャンプ」)で有名な松井優征さんの作品です。正面から、横から、下から。どの角度から見ても、その緻密な画力に驚かされます。と同時に、多くの人が疑問に思うはず。「松井さんはどうしてこれを描いたんだろう?」。その謎は、小部屋の壁にある漫画を読むと解き明かされます。タイトルは『東京の脅威とギンギンの未来』。漫画とロボットは私たちを松井さんの世界に招いてくれます。

天井に届きそうなほどのロボットのイラスト

 同じ「週刊少年ジャンプ」で人気を博した『約束のネバーランド』作者の出水ぽすかさんの小部屋もあります。タイトルは「ここにいる街」。幼少期から東京に住んでいる出水さんにとって、東京はあって当たり前のものでした。しかし他の地域の友達との出会いと別れを経験し、東京は「ほんのひと時を一緒に住まい、やがてすれ違っていく場所なんだ」と思い至るように。なにげない東京の情景が、出水さんの手によってきらめく世界になります。

出水ぽすかさんの作品

 多様な観点と表現で描かれる東京は、漫画家の持つ個性をも映し出します。ひときわ目を引いたのは、「天狗跳梁聖橋下(てんぐのあそぶはひじりばしのした)」という黒田硫黄さんの一大絵巻。昭和から平成に変わる頃、孤独な予備校生だった黒田さんは、お茶の水橋から聖橋を眺めていました。奥行と傾斜、水面にも注目してみてください。

黒田硫黄さんの作品

音声ガイドは「鬼滅の刃」花江夏樹さん

 「水と石のプロムナード」には、大童澄瞳さんの作品「East East」が水上に展示されています。大童さんは『映像研には手を出すな!』(「月刊!スピリッツ」)などで有名な漫画家ですが、アニメーター、映画監督など多岐に渡って活躍しています。大童さんだからこそできた、新しい漫画表現が味わえます。

大童澄瞳さんの作品「横角」

 中庭の壁には、石塚真一さんの1コマ漫画「Tokyo Sound」があります。「東京を訪れる人々の日々の心には喜びも悲しみも万差億別 」と綴る石塚さん。この作品も、見る人にとってさまざまな「東京」を呼び起こします。

 本展の音声ガイドのナビゲーターを務めるのが、『鬼滅の刃』や『東京喰種』などで知られる声優・花江夏樹さんというのもうれしいポイント。漫画、そして東京という街の無限の可能性を感じ取ってみてください。

石塚真一さんの作品が展示された中庭の様子