小学校で、「あれ怖かったよね」と友達が「急患」(1991年)や「峠の茶屋」(1991年)の話をしているのを聞き、どれどれ、と自分でも観てみたのがきっかけで、私は「世にも奇妙な物語」を知った。
私はもともと小説でもドラマでも短編が好きで、短い中で起承転結があり、驚いたり感動したり余韻を楽しんだりできることを、ぜいたくな体験だと感じていた。「世にも奇妙な物語」は、作風も放送回によって異なり、コミカルな話、ハートウォーミングな話、切なくなる話、そして怖い話と、バラエティに富んでいたが、やはり、怖くて不思議な話をやるドラマ、という印象が強かった。
一話15分程度の短編ドラマを集めたオムニバスシリーズだったのもよかったのだと思う。当時の私はまだ子どもで、怖がりだったが、一話15分程度ならば、なんとか最後まで観ることができた。
とはいえ、毎週観ていたわけではない。当時私には、毎週決まった時間にドラマを観るという習慣がなかったので、何曜日の何時にやっているものかすら知らなかった。比較的熱心に観るようになったのは、1992年までのレギュラー放送が終了し、改編期の特別番組として放映されるようになってからだから、見逃していたエピソードのほうが多いくらいだ。それでも、どこか不思議だったり不条理だったりする話を、毎回違った作風と演出で見せるドラマシリーズ、それ自体がときめくものだった。
そんな、不真面目なファンである私にも、強く印象に残っているエピソードはいくつかある。
たとえば、じわじわと不安が募っていき、最終的には不条理な状況を主人公たちが受け容れてしまう(しかない)、「帰れない」(片岡鶴太郎主演、1991年)。
「熊の木本線」(石田純一主演1996年冬の特別編)は、筒井康隆原作の有名短編だが、私は「世にも奇妙な物語」を観て初めて知った。強く印象に残っていたその話が、「家族八景」や「七瀬ふたたび」を書いた氏の原作であると知り、氏の短編作品に手を伸ばすきっかけになった。
そして、もっとも強烈な印象を残したのが、1995年の「春の特別編」で放映された「トイレの落書」(木村拓哉主演)だ。終電間際に駅のトイレに駆け込んだサラリーマンが、「午前0時、扉は閉ざされる」と書かれた落書きのとおりにトイレに閉じ込められてしまい、その場で夜を明かすことになってしまうというストーリーで、不穏な内容の落書きが次々と現実になっていく様子にハラハラし、オチも、その後の余韻も素晴らしいと思った。
私の書いたノンシリーズのホラー短編を、「奇妙な味」と評していただいたことが何度かあるが、そこにはおそらくこの作品を始めとする「世にも奇妙な物語」の影響が少なくないと思う。
木村拓哉氏の演技もまたいい。奇妙な世界に迷い込んだのが彼の演じる飄々とした現代的なキャラクターであるからこそ、物語の不条理さ、恐ろしさが際立っている。木村拓哉氏の主演作としては、「SMAPの特別編」で放映された「BLACK ROOM」が一番有名だが、若き日の彼はその前にも「言葉のない部屋」(1992年)で主演を務めていて、こちらも切なくて素晴らしい。
「世にも奇妙な物語」は長いシリーズだ。毎年新作を楽しみにしているが、きっとまだ観ていない作品の中にも、傑作がたくさんあるのだろう。いつか全作品を通して観てみたいと常々思っている。機会があったら、と言いながら後回し後回しになっているし、そもそもソフト化されていない話もあるようだが、いつかは実現させたい。そうしたらきっとまた、自分でも、奇妙な短編を書きたくなるだろう。