1. HOME
  2. コラム
  3. コミック・セレクト
  4. 高野ひと深「ジーンブライド」 女性たちの絶望と、少しの希望

高野ひと深「ジーンブライド」 女性たちの絶望と、少しの希望

 先の総選挙で当選した女性議員は45人、わずか9・7%であった。上場企業の女性役員は7・4%、ジェンダーギャップ指数は156カ国中120位。本作にはそんな日本社会で理不尽な目に遭っている女性たちの絶望と怒りと少しの希望が詰まっている。

 主人公は女性ライター。美形ゆえに取材相手からセクハラを受けることも多く、心の中で「うんこたれがよ」と毒づきながら仕事をこなす。そんなある日、元同級生の男が訪ねてくる。饒舌(じょうぜつ)で理屈っぽく変人丸出しの言動にドン引きの彼女。が、実は何らかの発達障害らしい彼は、ある意味、誠実で公平だった。

 舞台は現代日本のようだが少し異なる並行世界。2人が通っていた学校の秘密やSF的設定には物語(フィクション)として興味をそそられる。しかし、この1巻で描かれている事象は、今の日本の現実だ。主人公のほかにも日常的に性被害の危険にさらされている女性たちが登場する。もちろん実際には男性が被害に遭うケースもある。我々はそんな世界にどう立ち向かえばいいのか。

 作中の選挙では女性議員が若干ながら増えた。そこに作者の希望と祈りを見る。それは女性だけでなく男性にも共有できるもののはずだ。=朝日新聞2021年12月4日掲載