ある会社がどのような会社かを知ろうと思ったとき、いくらか会計の知識があれば決算書を読もうとするだろう。だが、ビジネス環境が激変する中で急成長を遂げている企業の実態を決算書から読み解くのは容易ではない。
例えば、成長著しいメルカリは2020年6月期まで4期連続で赤字を拡大させていた。言われてみれば当たり前だが、赤字が続いても手元のキャッシュさえ確保し続ければ会社は潰れない。メルカリは仕入れが不要なビジネスモデルと投資家の高い期待を背景にキャッシュを確保しつつ潤沢に広告宣伝費を投入し、単年度の利益より事業拡大を優先してきたのだ。
アマゾン、Slack、ソフトバンクグループなど今を時めく企業はこれまでの常識を覆すビジネスモデルを持っている。こうした企業を正しく理解するにはビジネスモデルの肝は何で、それは決算書のどの数字に表れてくるのかを考える必要がある。本書はこれらの企業の最新の決算書を題材に、読者自身が決算書を読み解くためのトレーニングができる一冊。ファイナンスの入門書としてはやや難しいが、激動の時代を生き抜くビジネス感覚を鍛えるためにぜひトライしてほしい。=朝日新聞2022年2月5日掲載