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写真の実存の確認を問いかける吉田志穂の「測量|山」

『測量|山』から

 吉田の作品と出会ったのは二〇二〇年のとあるグループ展。しかも偶然、設営現場に居合わせることができた。床に置かれた額入りのモノクロ写真は、それ自体が魅力的で目を引いたが、出来上がっていくインスタレーションもまた美しかった。思わず幾つか質問を投げかけ、返ってきた答えも印象的だった。

 あのときと同じ、山の写真のシリーズが本書にはまとめられている。インターネットで山を検索し、出てきた画像を持参して、実際その山がある場所まで赴く。その行為を通じて吉田が獲得したイメージ群は空間に置かれ、撮影され、写真としてまた展示され、その展示もまた撮影され、印刷されて写真集になり、それを私が眺める。このとき、テーブルの上で吉田の写真は再び3次元の物質になって空間を構成する。写真=データの時代であるいま、吉田の写真行為および作品は、被写体の実存の確認であると同時に写真のそれについても鑑賞者に問いかけている。=朝日新聞2022年2月19日掲載