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「女性自衛官」と「東大女子」で知る女性の生きづらさ 藤田結子が選ぶ注目の新書

「女性自衛官 キャリア、自分らしさと任務遂行」

 上野友子・武石恵美子『女性自衛官 キャリア、自分らしさと任務遂行』(光文社新書・946円)は上級幹部で子どものいる女性自衛官を調査した労作だ。男性中心の職場で、「超過勤務」という概念がないどころか、不測の事態には我が子より国の任務を優先。子どもに「何かあったらママはいなくなるから」と伝え、命を投げ出す覚悟もしているという。仕事と子育ての両立について、女性自衛官の並大抵ではない葛藤が語られるが、彼女たちが非常にポジティヴなのが印象的だ。そこに自衛隊という組織の文化も垣間見える。

★上野友子・武石恵美子著 光文社新書・946円

『東大女子という生き方』

 秋山千佳『東大女子という生き方』(文春新書・1078円)は、東大卒著名人へのインタビューを軸に様々な人生を描く。男性中心の社会で涙をのんできた女性の本音が引き出されている。脳科学者の中野信子さんは、「鉄門(医学部医学科)は男性の聖域」「どれだけ論文を書いても、子どもは産んだのかと言われる」と、アカデミアに見切りをつけた経緯を話し始めると感情が昂(たか)ぶる。ほかにも「女性NG」と遠回しに言われる研究室があったという声が。「東大女子お断り」のサークルでは、お酌からドアの開閉まで今も女性の役割だという。努力を重ねた人たちが性別で排除される社会の姿を浮き彫りにする。

★秋山千佳著 文春新書・1078円=朝日新聞2022年4月9日掲載