「水中考古学」書評 海中の遺物から歴史を書き換える
評者: 宮地ゆう
/ 朝⽇新聞掲載:2022年04月30日
水中考古学 地球最後のフロンティア 海に眠る遺跡が塗り替える世界と日本の歴史
著者:佐々木 ランディ
出版社:エクスナレッジ
ジャンル:歴史・地理・民俗
ISBN: 9784767829272
発売⽇: 2022/02/28
サイズ: 19cm/334p
「水中考古学」 [著]佐々木ランディ
水中考古学者が自らの道のりとともに、国内外の沈没船などを案内する。自分で歩く(潜る)からこそ学問の魅力が伝わってくる。
ユネスコの統計では世界には約300万隻の沈没船があり、そのほとんどが未発見という。欧州では数十年かけて1隻の船を引き揚げて保全した例や、世界各地を巡って自ら調査した国王もいるそうだが、日本での関心はさほど高くない。
それゆえか、海外の研究者らにとって、日本は垂涎(すいぜん)の海らしい。長崎県・鷹島で見つかった13世紀の元寇(げんこう)の遺物のように、世界的な発見がいまも眠っている可能性があるのだ。
海外のトレジャーハンターが日本の沈没船を狙って著者に接触してきたり、彼らと裁判を闘った弁護士が調査を持ちかけてきたりと、映画のような裏話も。
海中の小さな遺物から点と点を結び歴史を書き換える過程は、想像をかき立てられる。日本の海がひと味違って見えてくる一冊だ。