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やまじえびね「女の子がいる場所は」 理不尽を受け流さない10歳の物語

©やまじえびね/KADOKAWA

 世界中のあらゆる場所に、権利獲得を求めて行動を起こしてきた女性がいる。幾世代も経て現代にわたって来たその熱の高まりを、今強く感じる。ここでいう“権利”とは、学ぶ権利であり、自分の意志で己の肉体をコントロールし、将来を選択する権利だ。

 その一方で、宗教や文化、社会通念が異なる国々で暮らす少女たちが、「女の子だから」というだけで理不尽を強いられてもいる。本作は、それを「そういうものだから」と受け流さない10歳の少女たちの物語だ。

 一夫多妻制が認められているサウジアラビアのサルマ。彼女の同級生の姉は、顔を見たことすらない男性と結婚する。モロッコのハビーバは祖母の口うるさい友人が抱える大きな喪失と哀(かな)しみに触れ、両親が離婚した日本のまりえは幸せの意味を考える。

 端正な線で紡がれた五つの国の物語。ここに登場する少女たちは表情豊かで、幼いその目は高性能レンズのように、日常にはびこる欺瞞(ぎまん)や偏見を映しだす。捉えた事実に戸惑い、揺れたとしても、思考停止には陥らない彼女たちは未来を照らす光だ。たとえ、生きる場所は違っても、現代を生きる同志として共有したい想(おも)いがここに詰まっている。=朝日新聞2022年7月2日掲載