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自由研究のヒントになる絵本6選

食べ物のルーツを調べよう

 暑い夏にさらりと食べたいお寿司。でも、手を伸ばす前に、ちょっと待って。その魚が泳いでいた時の姿や場所を知っていますか? 『おすしやさんにいらっしゃい! 生きものが食べものになるまで』(岩崎書店)は、釣られた魚がさばかれ、お寿司になるまでの過程を写真で分かりやすく伝える一冊。作者は現役の寿司職人・岡田大介さんです。

『おすしやさんにいらっしゃい! 生きものが食べものになるまで』(文:おかだだいすけ、写真:遠藤宏、岩崎書店)

 岡田さんは長年、「食材の持つメッセージをお客さんに伝えたい」と魚をさばく工程を見せてからお寿司を食べてもらっていました。「魚をもっと見て、知ってからお寿司を食べると、いつも食べるお寿司とはまったく違う感覚が味わえます」と語ります。「生きものが食べものになるまでを見せることで僕が伝えたいのは、命のことです。どんな食材にも魂が宿っていて、食べることで自分の血肉となります。さらに、目には見えないけれど、魂としてその人の中にたまっていくと思うんです」。今春、青少年読書感想文全国コンクールの課題図書に選ばれ、日本絵本賞も受賞した話題の絵本です。

>岡田大介さんのインタビュー全文はこちら

 一つのおにぎりから、人の仕事や世界のつながりを考える絵本『おにぎりはどこからきた?』(東急エージェンシー)。「お米はどこからきたの?」「塩はどうやってできるの?」という素朴な疑問について、分かりやすく解説しています。作者のマルチクリエイター・小沼敏郎さんは「おいしいおにぎりを食べたくても、材料を届けてくれる人がいなかったら、ぼくたちは食べられない。仕事のひとつひとつが全部つながっている。そういうふうに、世界がつながっていることを意識するとっかかりになればと思っています」と話します。

>小沼敏郎さんのインタビュー全文はこちら

大きさ・広さを感じよう

 動物園に行っても、柵越しに遠目からしか動物が見られなかったり、暑くて動物たちに元気がなかったり。『ほんとのおおきさ動物園』(学研プラス)は、パンダやシマウマ、キリン、ゾウなど、子どもたちに人気の動物たちが実物大で見られる写真絵本です。毛の生え方や目つき、唇やまつげの様子など、細部までじっくり観察することができます。

『ほんとのおおきさ動物園』(学研プラス)より

 監修したのは自称・動物オタクの小宮輝之さん。幼い頃から動物が好きで、飼育係を経て、東京・上野動物園の園長を務めました。「動物の近くにいる飼育員でも、相手は動いているからここまで見ることはできない」と自信をのぞかせる一冊は世界でも人気で、続編の『もっと!ほんとのおおきさ動物園』『ほんとのおおきさ水族館』ほか、9作続くシリーズとなっています。

>小宮輝之さんのインタビュー全文はこちら

 動物の大きさよりも実感しにくい、広大な「宇宙」を身近なものさしで教えてくれるのは、てづかあけみさんの『はじめてのうちゅうえほん』(パイ インターナショナル)。「地球から一番近くの月まで、新幹線で行ったら53日もかかる」「月では、いつもの力で6倍の高さまでジャンプができる」など、誰にでも分かりやすい表現で書かれています。こちらも「はじめての」シリーズとしてこれまでに21冊が刊行され、発行部数は世界で100万部を突破しています。

>てづかあけみさんのインタビュー全文はこちら

『はじめてのうちゅうえほん』(パイ インターナショナル)より

環境について考えよう

 プラスチック製の買い物袋が有料化され、エコバッグを持ち歩くことが当たり前になってきました。では、なぜプラスチックが問題になっているのでしょうか? そんな疑問を正面から取り上げたのが『プラスチックモンスターをやっつけよう! きみが地球のためにできること』(クレヨンハウス)です。

 プラスチック製品は安くて加工しやすく、便利なために身近にあふれています。しかし、加工する際にたくさんの添加剤を使用し、体に有害なものもたくさんあります。それがゴミとなって海に流れ出し、ボロボロに劣化したものを魚が食べ、さらにその魚を人間が食べると――。

 監修者で東京農工大学農学部環境資源科学科教授の高田秀重さんは、「石油由来のプラスチック自体が地球に合わない存在になってきている」と言います。「石油から作ったプラスチックを使い続けている限り、自然の輪の中に入れない。プラスチックフリーの行動をすることで、『自分も自然の一員なんだ』という感覚が生まれてくるといいなと思います」。家にあるプラスチックごみを数えたり、プラスチック製品を別のものに置き換えたりするきっかけになるかもしれません。

>高田秀重さんのインタビュー全文はこちら

 一方、昔ながらの日本のもの作りは、自然を生かし、ゴミの出ない、見事な循環の中に成り立っています。例えば和ろうそくは、蒸したハゼの実を絞ってロウを取り、その搾りかすを藍染め職人が引き取って、藍を発酵させる甕をあたためる熱源にし、その藍染めの染液を作る過程で残る木灰は、皿や茶碗などを作る焼き物の職人が釉薬に混ぜて使う――といった具合です。

 カメラマン・大西暢夫さんの『和ろうそくは、つなぐ』(アリス館)は、和ろうそくを中心に、一見関係ないように見える職人仕事の「つながり」をテーマにした写真絵本です。「『和ろうそくは、つなぐ』は職人さんたちの貴重な記録です。これからますます貴重になっていくでしょう。職人が受け継いできたものが一度途絶えてしまったら、復活させることがとても難しい。つながりを消してはいけないと思います」と大西さんは語ります。

>大西暢夫さんのインタビュー全文はこちら

木の年輪のようなロウの層ができるので「切って断面を見ると和ろうそくかどうかがすぐわかる」と大西さん。和ろうそくは今も神社仏閣などで大切に使われている。