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大河ドラマを深掘りできる「鎌倉武士の生活」など田中大喜が選ぶ新書2点

『16テーマで知る 鎌倉武士の生活』

 今年のNHK大河ドラマを見て、鎌倉武士に関心を寄せている読者も多いだろう。西田友広『16テーマで知る 鎌倉武士の生活』(岩波ジュニア新書・968円)は、古文書を始めとする多様な史料を紐解(ひもと)きながらその実像に迫る。

 ドラマから垣間見える鎌倉武士の合戦・武芸・服装・娯楽はもとより、ドラマからは詳しく窺(うかが)い知れない住居・食生活・教養・暴力と信仰・鎌倉殿(将軍)への奉公といった側面にも光を当て、等身大の姿を具体的に示す。彼らも我々と同じ一人の人間として、様々な苦労・苦悩と願望・欲望を抱えながら日常を生きていたことが実感される。
★西田友広著 岩波ジュニア新書・968円

『宝治合戦(ほうじかっせん) 北条得宗家と三浦一族の最終戦争』

 細川重男『宝治合戦(ほうじかっせん) 北条得宗家と三浦一族の最終戦争』(朝日新書・1089円)は、北条氏の最後の他氏排斥事件とされる宝治合戦を取り上げる。宝治合戦を理解するための前提となる鎌倉幕府の御家人制や政治過程等について、研究成果にもとづいて平易に解説するが、本書の大きな特色は全体の半分以上の紙幅を割いて小説によって合戦を紹介している点である。

 『吾妻鏡』に依拠しながら、独特の筆致で宝治合戦と著者の鎌倉武士的世界観を描き出す。「虚実皮膜の間」を目指したという本書は、大河ドラマの「その後のドラマ」を大いに楽しませてくれる。
★細川重男著 朝日新書・1089円=朝日新聞2022年9月17日掲載