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小林秀雄賞、新潮ドキュメント賞の授賞式 「ゼミは謎解きに熱」「落合さんの空しさも表現」

小林秀雄賞を受賞した(左から)竹内康浩さん、朴舜起さんと、新潮ドキュメント賞を受賞した鈴木忠平さん=東京都港区

 小林秀雄賞と新潮ドキュメント賞の授賞式が7日、東京都内のホテルで開かれた。

 小林秀雄賞の受賞作は、『謎ときサリンジャー 「自殺」したのは誰なのか』(新潮選書)。北海道大学大学院教授・竹内康浩さんと、竹内さんの欧米文学研究室に所属する大学院生・朴舜起(ぼくしゅんき)さんによる共同執筆だ。

 選考委員を代表してスピーチした國分功一郎さんは「意識とは別の思考の次元があるのではと実感させられた。批評の定義そのものを覆しうる本」と評価。竹内さんは「私の研究人生はそれほど長くないかもしれないので、重大な任務を朴君に果たしてもらいたい」、朴さんは「竹内ゼミの生徒は師匠に似て探偵気取り。みんな、小説を読む以上の熱を謎解きに注いでいるかもしれない」とあいさつした。

 新潮ドキュメント賞は、今年すでに大宅壮一ノンフィクション賞、講談社本田靖春ノンフィクション賞などを受けている『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(文芸春秋)に贈られた。

 著者の鈴木忠平さんは、かつてスポーツ紙の記者として「落合番」をしていた。スピーチでは、退社を落合さんに報告した時を回顧。落合さんは、「何でそんなことをするんだ」と言ったという。「一匹おおかみと言われた落合さんは、組織と個人のはざまで悩んだ末にこういう生き方しかできなかった。落合さんが失ったもの、空しさも表現しないといけないと言い聞かせながら、執筆した」

 選考委員の保阪正康さんは「作品は、(落合さんを描きながら)人の生き方の思想や、自身の心理的変化を語っている。鈴木さんは自制心が強いと感じる。ノンフィクションを書く上での最大の利点になる」と励ました。(真田香菜子)=朝日新聞2022年10月12日掲載