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「アホウドリの迷信」書評 未知の作家の面白さに出会う

評者: 椹木野衣 / 朝⽇新聞掲載:2022年12月03日
アホウドリの迷信 現代英語圏異色短篇コレクション (SWITCH LIBRARY) 著者:岸本 佐知子 出版社:スイッチ・パブリッシング ジャンル:欧米の小説・文学

ISBN: 9784884185947
発売⽇: 2022/09/30
サイズ: 20cm/227p

「アホウドリの迷信」 [編訳]岸本佐知子、柴田元幸

 小説を読む楽しみはいろいろだと思うけれども、何日もかけて一冊の長編を読み切る充実感とは別に、いろんな味がする短編を次々と読み抜いていくのは、まったく別の心地よさがある。それが未知の作家の手によるものであれば、なおさらだ。でも、そういう読書は玉石混交にもなりやすい。その点、ふたりの翻訳の名手によって現代の英語圏から、カードゲームで秘蔵の手札を出し合うように選ばれた本コレクションは、読んでいて痛快だった。「日本でまったく、もしくはほとんど紹介されていない作家」たちの短編のなかに、こんな面白さがザクザクと埋もれていたとは!
 というより、ほとんど知らない作家だからこそ、こんなにワクワクするのだろう。むかし未知な新しい音楽に触れたくてレコード屋で「ジャケ買い」し、ずいぶんと散財したけれども、こういう「オムニバス」があれば、きっと僕は真っ先に飛びついていただろう。