もうすぐクリスマスだからというわけではないが、今回読んでみたのは鉄道とおもちゃの情報誌「鉄おも!」。
幼少期の男子の多くが電車好きと虫好きにわかれるというのはよく聞く話である。
虫好きはやがて動物や鳥、魚にも分岐し、年を経るとだんだん植物や石なんかにも興味を持ったりするようだが、電車好きはずっと電車のままだったりする。しかも虫好きはある程度もの心ついてからのめり込んでいくのに対し、電車好きはそれよりはるか前、まだ言葉もしゃべらないうちからどっぷりはまっていく。「ママ」と言葉を発するより前に「あずさ」が言えるようになった男子もいると聞いた。
もちろん女子にも電車好きはいるけれど、なぜ男子はもの心つく前から電車好きが多いのか。
日本で初の鉄道が開業してからたかだか150年。DNAに電車好き因子が組み込まれているはずはないのである。それなのに、なぜみんなみんな電車に引きつけられていくのか。動くものが好きだから? それとも棒みたいだから(子どもは棒も好きだ)?
んんん、わからない。誰かこの謎を解明してほしい。人類誕生の秘密に迫る壮大なミステリーが隠されている気もする。
さて「鉄おも!」をめくってみると、最初からひたすら鉄道写真が並んでいる。
12月号の特集は「個性的な電車大集合!」。
鉄仮面のような南海電気鉄道の50000系ラピートや、東海道・山陽新幹線のドクターイエロー、鉄道が途中からバスに変わって道路を走る阿佐海岸鉄道のDMVなど有名な車両のほか、京浜急行電鉄デト11形・12形というトラックのような奇妙な形の電車まで載っていて、子ども向けといって侮れないマニアックぶり。アメリカ軍の燃料を運ぶタンク列車「米タン」て、そこまでの情報いります?
さらにJR東日本の大型クレーン車マルチタスカー810N。線路を走るクレーン車があるとは知らなかった。男子は工作機械も好きだから、これもツボにはまりそうだ。
幼い頃からこんなものをたくさん見せて、鉄道沼に引きずり込む気満々である。後半はおもちゃや鉄道関連グッズがたくさん載っており、もはや完全に罠(わな)だ。
この雑誌を思いついた人は天才ではなかろうか。鉄道とおもちゃの月刊誌。自分が子どもの頃も、乗り物図鑑ばかり見ていた記憶があるけれど、それが月刊で届くとなったらほんとにもう……。どう考えても売れる気しかしない。
誌面最後のほうにある読者のお便りコーナー「鉄おも!新聞」に出てくる子どもたちの表情の楽しそうなこと。そしてよくよく見れば、どの写真もほとんど男子ばかりである。ほんとにいったいなぜなんだ。=朝日新聞2022年12月3日掲載