図書館に出向かなくてもスマホやパソコンで電子書籍を読める「電子図書館」サービスがコロナ禍を背景に広がるなか、インターネットを通じて電子書籍を自動で読み上げてもらえる視覚障害者専用の電子図書館「アクセシブルライブラリー」を、電子書籍取次大手のメディアドゥが開設した。
地域の公立図書館や役所でQRコード付きのIDカードを作れば、スマホなどから無料で専用サイトにアクセスできる。利用できる電子書籍は、今月15日時点でゴマブックス、スターツ出版など出版社5社と青空文庫の計約1万4千点。
数字や固有名詞をゆっくり読むなど高速再生でも聞き取りやすいように工夫され、声質も8種類から選ぶことができる。自動読み上げは固有名詞の読み方やイントネーションが正確でない場合があるほか、提供出版社が5社にとどまっていることなど課題もあるが、出版社と交渉しながらサービス拡大に努めている。
6月のサービス開始以降、東京都江戸川区、大阪府柏原市などが導入。10月にはデジタル庁の「good digital award」でグランプリを受賞した。
京都府宇治市の市中央図書館では、これまでに26人がIDカードを作った。利用を促進しようとスマホ講座も開いたが、「弱視の人や若い人はスムーズに使えるけど、スマホに慣れていない全盲の高齢者にはなかなか難しそうだ」と安田美樹館長は話す。
それでも、実用書やライト文芸など、多様な本が利用できるのが魅力だという。「まだまだこれからのサービスだけど、今後出版社との契約が増えて、もっともっと作品が増えていけば」(田中ゑれ奈)=朝日新聞2022年12月21日掲載