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青柳正規「小学館の図鑑NEOアート 図解はじめての絵画」 小難しい解説より楽しむ心を

 まるで机や膝(ひざ)の上に美術館が現れたよう……図鑑ならではの大きなサイズで「絵の鑑賞を通じて、絵について学ぶ」体験ができます。図鑑の趣旨として、題名などはわざと小さくのせて、まず、絵を見てもらうようにしているとか。従来の美術書は解説文が難解で、美術へのハードルが高くなってしまいますが、この図鑑は、絵の世界に入ったあと、素朴な疑問やキャッチーなテーマについて掘り下げる構成になっています。
 例えば「この人たちの顔、どれくらいの大きさ?」と、モナ・リザや源頼朝像などの実物大の顔の部分を並べたり、「この絵、ちょっと変!?」とダリやマグリット、キリコの絵画を紹介したり。教科書や美術史の本などでは「シュルレアリスムは詩人のアンドレ・ブルトンが提唱し……」と解説を添えるところ、この図鑑には小難しい文章はなく、奇妙な風景画に没頭できます。大人も純粋に絵を楽しむ心を取り戻せそうです。

 また、皆が大好きな動物のかわいい絵を積極的に取り入れています。「動物たちのパラダイス」と題して、伊藤若冲やヤン・ブリューゲルの動物がひしめく絵画を掲載。「さわりたくなっちゃう絵」としてフワフワの猫やウサギが描かれた作品を紹介するページも。全体的にメジャーでポジティブな作品が多く、怖い絵が好きな人は物足りないかもしれませんが、絵の入門編としては穏当です。日々ネガティブなニュースばかり見ている大人も心が洗われます。
 後半には、絵の技法や画材、美術館についてや、絵に関わる仕事の紹介のページが。「画家」「版画家」だけでなく「学芸員」「オークショニア」「アートセラピスト」など、多岐にわたっていて可能性が広がります。そこまで夢を追わなくても、最後は「目のはたらき」「目の能力」でしめくくられていて、絵を鑑賞できただけでもありがたい、と読後に肯定感が。子どものうちは世界の暗部ではなく光の部分を見せるのが良さそうです。=朝日新聞2023年6月24日掲載

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 小学館・2970円=4刷20万部。2月刊。図鑑NEOの新シリーズ1冊目。担当者は「見開きごとにワンテーマで作品鑑賞の楽しさを追究した。入門書として新鮮に受け止められた」。