「大規模言語モデルは新たな知能か」書評 開発を俯瞰 付き合い方に示唆
ISBN: 9784000297196
発売⽇: 2023/06/22
サイズ: 19cm/132p
「大規模言語モデルは新たな知能か」 [著]岡野原大輔
2022年11月、OpenAI社が生成AI「ChatGPT」を公開した。これが一つの契機となり、生成AIが我々の社会に様々な形で浸透しつつあることが改めて浮き彫りになった。直接、生成AIソフトを使用していない人も、そのアウトプットや機能を利用したシステムが急速に社会に広まっている状況では、自分には関係ないとも言ってはいられない。
AIは人工知能の略称であり、生物の知覚や知能をコンピューターで人工的に再現したものを指す。例えば、スマホで写真を撮ればAIが人の顔を判別してくれる。生成AIはそのなかでも、人間の「文章や画像を生成する」能力を再現するソフトウェアだ。
AIが生活をサポートする社会は何十年も前からメディアで喧伝(けんでん)されてきた。しかし、こんなにも早く高度な生成能力を獲得するとは予想していなかった。
文章の生成では、単語など文章の構成部分に対して出現確率を割り当て、言語モデルを作る。言語モデルの調整変数の数を大きくし、莫大(ばくだい)な量の文章データを教材にして「学習」させることでその精度を高める。目指すのは、未知のデータに適用可能な汎化(はんか)能力の獲得だ。教材データの量と言語モデルの規模を格段に大きくすることで、高い汎化能力の獲得に成功した。
生成AIが得体(えたい)のしれないものと感じている方こそ、開発の流れを俯瞰(ふかん)し、その付き合い方に示唆を与えてくれる本書を手に取ってほしい。一方、生成AIをインフラとして活用するときには、言語モデルの訓練には価値観の修正といった人間の介在が含まれていること、生成AIは現在進行形で大きな変革を遂げているということにも注意をしたい。
さて、現在、生成AIによって表現されている知能は人類のものとは異なる。故に、改めて問い直したくなる。知能とは何か。理解をするとはどういうことなのか。
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おかのはら・だいすけ 1982年生まれ。株式会社Preferred Networks(PFN)代表取締役最高研究責任者。