ようこそ、いちご色の世界へ
「魔法の文学館」は、東京都江戸川区の「なぎさ公園」内にあります。真っ白な建物は建築家・隈研吾さんの設計。「フラワールーフ」と名付けられた、花びらが広がるようなデザインの屋根が特徴的です。緑に囲まれ、小高い丘のようになったところに建っているので、抜群の見晴らしになっています。
入り口を抜けると、真っ白な建物外観から一転して、いちご色の世界が広がります。角野さんの代表作『魔女の宅急便』の舞台「コリコの町」をイメージした館内の内装デザインは、角野さんの長女でアートディレクターのくぼしまりおさんが手がけたもの。いちご色の小さなおうちが連なる中を進んでいくと、何かの物語の世界に入り込んだような気分になります。
小さなおうちの中には、ちょっとした仕掛けのある小窓やのぞき穴があるものも。中をのぞいてみると、アッと驚く視覚トリックが楽しめます。
さらに、角野さんの代表作のキャラクターたちが登場するプロジェクションマッピングも壁一面に映し出され、この奥がどんな風になっているのか、わくわくせずにはいられません。
自由に選んで、好きな場所で読んで
「魔法の文学館」の蔵書は、およそ1万冊。1階の「コリコの町」の奥には、中央に角野さんの作品が並ぶ本棚があり、その周りに外国語の絵本や児童書など約1000冊が収蔵されています。2階のライブラリーには、赤ちゃん絵本、岩波少年文庫や青い鳥文庫などのヤングアダルト、図鑑など約7000冊が並び、残りは閉架書庫に。あえて細かく分類せずに並んでいるので、本との出会いを楽しみながら自由に選ぶことができます。
しかも、本を読むにもすてきな場所がいろいろ。お籠りして読むのにピッタリなおうち型のベンチや大・中・小とサイズ違いのうさ耳チェア、靴を脱いでくつろげるスペースなどがあります。屋外のテラスや芝生にも本を持ち出せるので、読む本や気分に合わせて場所を選んでみると、いつもと違った読書体験ができそうです。
角野さんの直筆原稿やワードローブもお目見え
2階には、角野さんのアトリエをイメージしたコーナーも登場。デスクには直筆の原稿やメモ、コリコの町の手描きマップなど貴重な資料のほか、愛用のガラスペンやインクなどの文房具もあります。
じっくり見たくなるのが、本棚にある愛読書や旅先で集めてきた小物や雑貨の数々。愛読書には魔女関連の本をはじめ、絵本や児童書はもちろん、『NANA』や『天才バカボン』などの漫画も並んでいました。
そして、角野さんといえば、その装いがおしゃれなことでも知られています。ふだんから着用しているアトリエコートやワンピース、小物類も展示されているので、角野ファッションを真似したい人は必見です。
ギャラリーや映像コンテンツで気分転換を
本を読むのに疲れたら、気分転換できる場所もあります。角野さんや児童文学に関する企画展を半年ごとに開催する2階のギャラリーでは、「魔女まじょ展」を開催中です(2024年4月8日まで)。角野さんが世界各地で収集してきた魔女人形のコレクションや魔女研究の旅での取材メモなどが展示されています。
もう一つ、ぜひ足を運んでほしいのが1階にある「黒猫シアター」です。「おばけのアッチ」や「リンゴちゃん」など角野作品の人気キャラクターが登場する、双方向型の映像コンテンツのほか、角野さんによる読み聞かせが楽しめます(プログラムはランダム上映)。入館の際に、時間指定のチケットを渡されるので、お見逃しなく。
カフェやショップも必見!
ちょっと小腹が空いたら、3階の「カフェ・キキ」でひと休みを。旧江戸川を眺めながら、ここにしかないスペシャルメニューを味わえます。
帰りには、1階のショップに立ち寄るのもお忘れなく。いちご色のオリジナルグッズをはじめ、アッチやリンゴちゃんなど角野作品のキャラクターグッズ、角野さん愛用のアトリエコートなど約100点が揃います。
子どもはもちろん、大人も大いに楽しめる「魔法の文学館」。想像力の翼を思いっきり広げて、楽しんでみてください。きっとそこには楽しい世界が待っています。