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グローバル化の波に主体的に対応した姿描く「世界史の中の戦国大名」 田中大喜が選ぶ注目新書 

『世界史の中の戦国大名』

 16世紀は、人類史上初めて地球的規模での人間の交流が生まれた世紀である。鹿毛(かげ)敏夫『世界史の中の戦国大名』(講談社現代新書・1210円)は、列島社会にも押し寄せたこのグローバル化の波に主体的に対応した戦国大名の姿を描く。

 戦国大名は列島の陸域において領土・領民を奪い合う一方、海域的世界へと乗り出していった。その対外活動は地球を俯瞰(ふかん)する広範囲に拡大し、東アジアの伝統的な国際秩序である華夷秩序を打ち破った。「天下統一」の営みに焦点を当てる日本史の枠組みからは窺(うかが)い知れない戦国大名の実態を浮き彫りにし、世界史上にその評価を位置づける。
★鹿毛(かげ)敏夫著、講談社現代新書・1210円

『紫式部 女房たちの宮廷生活』

 『源氏物語』の作者として有名な紫式部だが、その実像はあまり知られていないだろう。福家(ふくや)俊幸『紫式部 女房たちの宮廷生活』(平凡社新書・1078円)は、『紫式部日記』や『紫式部集』などの他の著作からその人物像に迫る。

 『源氏物語』を著し、その才知を藤原道長に認められる形で中宮彰子のもとに招聘(しょうへい)された紫式部は実務に有能な女房であり、彰子サロンの文化レベルの向上を求められた。これは清少納言と『枕草子』を擁した定子サロンへの対抗であり、両者は対比される立場に置かれたという。紫式部と『源氏物語』の政治性を摘出し、興味深い。
★福家(ふくや)俊幸著 平凡社新書・1078円=朝日新聞2023年11月25日掲載