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「ポール・ニューマン語る」書評 運命に従った大スターの生き様

評者: 横尾忠則 / 朝⽇新聞掲載:2024年01月27日
ポール・ニューマン語る ありふれた男の驚くべき人生 著者:品川 亮 出版社:早川書房 ジャンル:伝記

ISBN: 9784152102836
発売⽇: 2023/11/21
サイズ: 20cm/370p

「ポール・ニューマン語る」 [著]ポール・ニューマン

 1964年、パリのシャンゼリゼ通りの裏通りのホテルの入り口で小さい女の子を連れたポール・ニューマンに遭遇した。咄嗟(とっさ)に「写真を撮らせて」と声を掛けた。「子供と一緒なのでスミマセン」と丁重に断られたが、その態度が実に魅力的だった。
 この時の小さい女の子は女優のジョアン・ウッドワードとの最初の子供「ネル」で、彼が映画「栄光への脱出」のイスラエルでの撮影後に、パリへの子連れの旅の途上だったことを本書で初めて知って、あの偶然がまるで奇跡的な幸運に思えた。
 そして、もうひとつ。巻末の戸田奈津子さんの解説によると、ポール・ニューマンは一度も来日したことのないハリウッドスターの一人で、彼に会った日本人はそういないようだ。だからこのことでも少し嬉(うれ)しい気分になるのかな(笑)。
 さて、本題に入ろう。
 本書はポールの一人称による自伝である。幼年期、少年期を経て、戦争へ。そして大学生活を通して次第に演劇へ関心を抱き、俳優として映画界へ進出。一方、最初の妻ジャッキーとは、運命によってあらかじめ決められていた結婚と率直に明かすが、やがて不和で別離。その間前述のジョアンと板挟みだったが、彼女への熱情がポールをハリウッドスターの座へと導く原動力になった。
 ポールは「いつでも、万事なるようにしかならない」と自分の意志を超えて運命の力に従う。そんな生き方から、時にはエゴさえ否定して、それがかえって彼に幸運をもたらす。
 「長く熱い夜」で夫妻を起用したマーティン・リット監督はスターの条件として危険な香りとセックスアピールを挙げ、「ポールは完璧」。また妻のジョアンについても「非の打ちどころのない女性」と評する。
 ポールは来世も神秘主義も信じないが、「いずれ、なにもかもが冗談みたいなものだったと判明するのだ」ろうと予知して終わる。
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Paul Newman(1925~2008) 米の俳優。出演作に「ハスラー」「明日に向って撃て!」など。