大阪文学学校の70周年記念祭が大阪市内であり、ここで学んだ作家、朝井まかてさんが講演で「作家になりたいという思いがあるなら始めるしかない。一滴ずつでも書き続ければ水の流れになる」と話し、文学を志す人たちを励ました。
同校は「文校」と呼び親しまれてきた。特色は合評だ。作品をお互いに読んで率直に批評し合う。
初代校長は詩人の小野十三郎で、1954年に開校。いま10代から90代まで全国各地の約400人が学ぶ。
2020年から文校の特別アドバイザーを務める朝井さんが「小説を書くという人生」と題して話した。コピーライターとしてバブル期をがむしゃらに過ごしたが、忘れたふりでいた「小説を書いてみたいという気持ち」がわきあがって文校へ。合評で鍛えられ、08年デビューを果たした。
著書が売れない時期もあった。「小説を書く人生から降りたくないと書き続けた。作家は自分の考えを貫き、せいいっぱいを尽くして書くしかない」と覚悟を語った。そしてひそかな夢は――。「この本はどのジャンルの棚に置いたらいいか、書店員が悩むような作品をいつか書けたら」(河合真美江)=朝日新聞2024年4月3日掲載