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「新・新装版 三丁目が戦争です」書評 半世紀を経ていまも生きる描写

評者: 御厨貴 / 朝⽇新聞掲載:2024年11月16日
三丁目が戦争です 著者:筒井康隆 出版社:スローガン ジャンル:文学・評論

ISBN: 9784909856135
発売⽇: 2024/07/29
サイズ: 1.3×23cm/106p

「新・新装版 三丁目が戦争です」 [作]筒井康隆 [絵]永井豪

 この絵本は子どもに読んで欲しいし、読んで欲しくもない。筒井康隆と永井豪という、1960年代に異色の作家として現れた2人の作品だ。時代を反映してか、団地と住宅地と公園を舞台に、ポリバケツとれんがと火えんびんを小道具に、時代背景がよくわかる設定だ。何でもない市民一家が、ささいなことから戦争を起こし、次第にエスカレーションしていく。子どもと大人の心理の揺れを描いて過不足ない。初版は71年で、今夏に2度目の復刊となったが、現代にも十分通用する。
 戦争の描写では、日常生活の破壊が余すところなく描かれる。
 「生まれるときに、赤ちゃんが、しんでしまったのです」「どれがだれのからだで、どれがだれの手なのか、さっぱりわかりません。地面は、ちで、いけのようです」
 何たるむごい描写の連続か。そこで作者は戦争にも明るい終わり方があるのかと、救いがあるかのごとく問い、「戦争がはじまってしまえば、もう、どうしようもないのです」と全否定する。さて、だから子どもに読んで欲し……。