絵本作家・漫画家が、服にまつわる自身の記憶をたどった。彩り豊かなイラスト、やわらかな文章と逸話に心奪われる。
中学では友達が買ってもらった小花模様のロングスカートにあこがれた。今ほど既製服ばかりでなかった頃。母お手製の服との差が悲しくて、母を怒らせてしまった。
バルーンスカートできめて、先輩漫画家の会合へ出かけた高校時代。大学に入り、さんざん迷った末に手にいれたピーコートは丁寧に20年着て、今も捨てられない。
離れて暮らす恋人に「これを着て会いたい」の一心でミシンを踏み、仕上げた空色のワンピース。母親もスカートをはいていいと気づいた時の「すうっと風が吹き抜けたような気持ち」のこと。
あした何着ようかな、は「いい日でありますように」。祈りのようでもあると書く。=大和書房・1870円(藤生京子)=朝日新聞2025年2月15日掲載
