湊かなえさん「暁星」どんな本? 宗教2世の苦しみと闇に、作家の想像力で向き合う
2025年11月刊行の『暁星』は、文部科学大臣で大御所の作家が、式典で舞台袖から飛び出してきた男に刺されて死亡する事件から始まります。政治家の暗殺事件を入り口に、新興宗教の宗教2世が抱える苦しみと闇に、作家の想像力で向き合い、希望を伝える作品です。
現役の文部科学大臣で文壇の大御所作家でもある清水義之が全国高校生総合文化祭の式典の最中、舞台袖から飛び出してきた男に刺されて死亡する事件がおきた。逮捕された男の名前は永瀬暁、37歳。永瀬は逮捕されたのち、週刊誌に手記を発表しはじめる。そこには、清水が深く関わっているとされる新興宗教「世界博愛和光連合(通称:愛光教会)」に対する恨みが綴られていた。暗闇の奥に隠された永瀬の目的とは──。湊かなえ Kanae Minato 双葉社オフィシャルサイト
湊さんが『暁星』で宗教2世の物語を描いたのは、安倍晋三元首相の銃撃事件がきっかけです。「家族関係が鎖になっている」などと「好書好日」のインタビューで以下のように語りました。
銃撃自体がまず大きなインパクトだったんですが、それに加えて統一教会という名前が出てきたことに驚きました。1990年代に霊感商法や合同結婚式などが大きく報道されていたものが、その後見聞きしなくなり、私は教団が持つ規模が小さくなったのか、なくなったぐらいに思っていたんです。それが、もっと大きな規模で、もっと影響力のある人たちに関係のあるものになっていたなんて……。自分の人生においてもそちらに続く分かれ道が身近にあったこともあり、誰にでも起こりうることとして考えるようになりました。
これまでの作品で私は、親子、とりわけ母と娘の関係を書いてきました。宗教2世の問題の本質も、教団を離脱することが、親を捨てることと結びついてしまう心理的な難しさに結びついているところです。信仰を捨てたいし、教団から逃げたいけれど、親を置き去りにすることもできない……。家族関係が鎖になっているのではないかと、書きながら改めて感じました。湊かなえさん「暁星」インタビュー 作家として「言葉」に向き合い、新たな扉開いた
湊さんは、本作について「29作目にして、私はこの作品が一番好きだと断言できます」とコメント。デビューから18年を経て、言葉や物語への想いも語っています。
言葉を中心に置くことで、自分が最初に考えていた以上に小説や物語の意味について書くことができて、改めて自分は言葉と一緒に生きているということを実感しました。デビューから18年経って、だんだんと干からびてきた感覚があって、あと何作書けるかなと思っていたところだったのですが、この作品のおかげで自分のなかで新たな扉が開いたような感じです。書き終えた時に、これを書けて良かったと思えました。自分の中でも納得のできる作品です。皆さんに読んでもらい、物語を共有できたらいいなと思っています。湊かなえさん「暁星」インタビュー 作家として「言葉」に向き合い、新たな扉開いた
『暁星』は、2026年本屋大賞にノミネートされました。本作は湊さん初のオーディブルファースト作品で、朗読は声優の櫻井孝宏さんと早見沙織さんが担当しています。