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佐藤正午さん「熟柿」どんな本? 罪を犯した母、あったはずの平凡な人生

『熟柿』あらすじ

 『熟柿』は、雨の夜に轢き逃げ事故を起こした妊婦のかおりが、服役中に息子を出産し、出所した後も息子への執着から各地を流転していく物語です。

 激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子・拓を出産する。出所後息子に会いたいがあまり園児連れ去り事件を起こした彼女は、息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。自らの罪を隠して生きる彼女にやがて、過去にまつわるある秘密が明かされる。
「熟柿」(KADOKAWA)

『熟柿』プロはこう読んだ

 書評家の吉田伸子さんは、「好書好日」に掲載された朝日新聞書評で、かおりの背負った罪と罰を思いながらも「それでもなお、人生にさす一条の光はある」として、以下のように読み解いています。

 物語は、ひき逃げ事件を起こしてからの彼女の17年を淡々と描いていく。かつかつの暮らしのなかから、息子を受取人にした生命保険料を払い込み続ける。日々を楽しむこともなく、むしろ楽しむことから遠ざかるようにして生きる。
 なのに、追いかけてくる悪意がある。追われるように各地を転々とせざるを得ないかおりの姿に、罪と罰、を思う。彼女が背負わなければいけない十字架の、残酷なまでの重さを。(略)
 罪は消えない。自責も続く。それでもなお、人生にさす一条の光はある。奇跡のようなその光に、躊躇いつつも手を伸ばすかおりの姿が、読後も胸に残る。 「熟柿」書評 罪の重さと、断ち切れぬ想いと

佐藤正午さんはこんな人

 佐藤正午さんは1955年、8月25日長崎県佐世保市生まれ。北海道大学文学部を中退、1983年『永遠の1/2』(小学館)で第7回すばる文学賞、2015年『鳩の撃退法』(小学館)で第6回山田風太郎賞、2017年『月の満ち欠け』(岩波書店)で直木賞を受賞しています。

 『熟柿』は2026年本屋大賞にノミネートされました。本作は「第20回中央公論文芸賞」を受賞し、「本の雑誌が選ぶ2025年度上半期ベスト10」で1位に選出されています

好書好日の記事から

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「熟柿」書評 罪の重さと、断ち切れぬ想いと