瀬尾まいこさん「ありか」どんな本? 「私の人生を全部込めた」母と娘の物語
2025年4月刊行の『ありか』は、シングルマザーとして工場で働きながら、一人娘のひかりを育てる美空を主人公に、様々な変化に満ちた1年間の物語が描かれます。
母親との関係に悩みながらも、一人娘のひかりを慈しみ育てる、シングルマザーの美空。
義弟で同性のことが好きな颯斗は、兄と美空が離婚した後も、何かと二人の世話を焼こうとするが――。
「子育てをしながら自分が受けた恩を思い知って、親に感謝していくのだと思っていた。それが親になった途端、さっぱりわからなくなった。この日々のどこに恩を感じさせるべきところがあるのだろう」
ありか - 瀬尾まいこ | 水鈴社
瀬尾さんは、「瀬尾さんと娘さんの物語を読んでみたいです」という編集者の言葉をきかっけに、「普通」の親子を書いてみようと思ったそうです。主人公の美空についても、出版社の公式noteで以下のように語っています。
今まで私は、血の繋がらない親子はよく書いてきたんですが、「普通」の親子のことは書いていなかったんですね。それを、自分の体験を元にして書いてみようかな、と。ここまで真正面から血の繋がった母と娘を書くのは、今回が初めてかもしれません。
瀬尾まいこ『ありか』刊行記念インタビュー|過去ではなくて、今ここに幸せがある。
美空さんに関しては、私は子どもを産むのが遅かったしシングルマザーではないんですが、若い頃に工場で働いたことがあったんです。母親は女手一つで私と姉と育ててくれて、その大変さは近くからずっと見てきました。そういった記憶がいろいろ結びついて、「もしも」の想像の中から美空さんが生まれたのかなと思います。
瀬尾まいこ『ありか』刊行記念インタビュー|過去ではなくて、今ここに幸せがある。
書評家の吉田伸子さんは、「好書好日」に掲載された朝日新聞書評で、「希望に満ちたラストも最高!」として、以下のように読み解いています。
ひかりとの時間を慈しみ、歓(よろこ)びを感じる美空と、子育てに見返りを求め続ける美空の母。対照的な二人ではあるけれど、「母性は勝手に湧き出てくれる便利なものじゃないし、子どもを愛せないからといって悪い親なわけでもない」という美空に、作者の瀬尾さんの思いが見える。ここをちゃんとふまえて描かれている物語だからこそ、説得力がある。「ありか」書評 娘との日々が教えてくれたこと
『ありか』は、2026年本屋大賞にノミネートされました。瀬尾さんは、発刊に際し「これまでの私の人生を全部込めたと言い切れる作品を描きました」とメッセージを寄せています。