胡原おみ「ふたり街あるき」 見落としてた景色を共有したい
袖ビーム、グレーチング、透かしブロック……と言われても、何だかわからない人もいるだろう。が、実物を見れば「ああアレか」と思うはずだ。どれも街角にありふれたもの。名前を知らなければ見過ごしてしまうけど、一度意識すると個体差にも気づく。本作は、そんな街角物件をめぐる物語。
大学進学で上京した芦山日向(あしやまひなた)は、ある日、家の近所の何でもない風景を撮影している青年に出会う。漫画家のアシスタントをしている彼は、資料写真を撮るついでに、気になる街角物件をコレクションしていた。自分とまるで違う視点で街を見ている彼に興味を惹(ひ)かれた日向は「生活のすぐ近くに 知らない景色 見落としてた景色がいっぱいあるんだ」と感じ入り、その視点を共有したいと思う。そこから二人の街歩きデート(?)が始まる。
参考文献に挙げられた『超芸術トマソン』や『街角図鑑』などの先行研究にはファンも多いが、この手の趣味がマンガで恋愛要素も絡めて描かれるとは予想外。作品の性格上必然の緻密(ちみつ)な背景描写も、単なる写真の加工ではなく人間の視覚を巧みに再現している。見開きで描かれた「室外機の聖地」は圧巻。日向と同じく、街歩きと路上観察の沼にハマる人が増えるかも?=朝日新聞2026年6月6日掲載