「究極Q太郎詩集 散歩依存症」(現代書館)で第7回大岡信賞を受賞した詩人の究極Q太郎さんと、元朝日新聞記者でフリーランスの稲垣えみ子さんによるトークと朗読の集いが6月上旬、朝日新聞東京本社で開かれた。受賞を記念したイベントで、参加者から熱心な質問も寄せられた。
稲垣さんは今年1月、朝日小学生新聞のコラム「天声こども語」で究極さんを「歩く詩人」として紹介。対談はまず、究極Q太郎という筆名の由来を尋ねるところから始まった。「オバケのQ太郎から?」という問いに、「1999年に人類が滅びるというノストラダムスの大予言の影響を受けて、99という数字にこだわりがあって」と究極さんは応じた。詩人・中原中也のように繰り返しのある名にもひかれ、大学時代につけたという。
「子どもの頃からこの社会に居場所がないと考えていた」という究極さんは、大学のサークル活動で、一人暮らしをする脳性まひ者の介護を始める。「僕は料理も障害者の介護をやりながら覚えたんです。社会性みたいなものを障害者の人々に教えてもらう経験をしてきた」と振り返った。「助けてあげてるというよりも……」と稲垣さんが言葉をかけると、「自分が助けられた」と究極さん。
自分に合う居場所を見つけた究極さんはその後、人間関係や、夜勤もある仕事の疲れから酒に依存。不眠とうつも患った。
稲垣さんは最近、父の介護を通して、自身が眠れなくなった体験を語り、「ケアの仕事って向き合い方が単純じゃない。お酒に走るのもわかった気がした」と共感を寄せた。
袋小路に入った究極さんが、酒の代わりに見つけたものが散歩だった。歩いていくうちに、10時間歩いてもくたびれなくなり、何も考えずに歩けるようになった。ただ、不眠は解消されないままだった。
それでも散歩に依存したことは良かったのか?と稲垣さんが問いかけると、「良かったと思います。だって、世界が美しく見えるからね。10年ぐらい書いていなかった詩も、歩いていると書けるようになっちゃって」。その後、いまのパートナーと出会い、不眠症は治まった。
終盤、究極さんが助け、助けられる関係にある同僚について触れると、稲垣さんはこう語った。「人は変化する。波がありますね。ずっと落ちていくわけじゃないし、ずっと上っていくわけでもない。どう波を乗りこなしていくか。仲間や話を聞いてくれる人は、大事ですね」
来場者からは「なぜ詩はわかりにくいのか」という問いも寄せられた。「単純な事実だけでなく、詩人には色々なものが見えてしまうから、単純なことを言ってわからせることに物足りなさを感じてしまう」と告げた究極さんは、次のような自身の体験で締めくくった。「宮沢賢治の『春と修羅』を読んだ10代の頃、意味はわからないけれど美しいと思っていた。何十年も追いかけて、後から意味を知る。長い散歩をしているのと同じかもしれない」(佐々波幸子)=朝日新聞2026年6月24日掲載
◇究極Q太郎さんと稲垣えみ子さんの対談はポッドキャストで公開中。詩の朗読を含めてこちらのQRコードから聞くことができます