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関根達人さん「琉球・奄美の葬墓制」〝北の考古学者〟が南島の葬送儀礼を探究

南島の墓制をまとめた関根達人・弘前大教授

 弘前大学(青森県)の関根達人教授が、奄美や琉球列島など南西諸島に広がる墓制をまとめた。北東北の古文化やアイヌ社会にアプローチしてきた北の考古学者が、なぜなのか。

 「お墓や儀礼は社会の映しかがみ。沖縄や奄美の社会構造にも迫れるし、島々をつなぐ物流も見えてくる。そんなフィールドがおもしろい」

 遺体を自然に朽ちさせる風葬。肉の落ちた骨を丁寧に洗って壺(つぼ)などに納める再葬。こんな独特の風習を支えてきた洞穴墓や積石墓、掘込墓、亀甲墓といった墓制や、そこに納められた厨子甕(ずしがめ)や石厨子などの蔵骨器の、なんと多様なこと。

 このバリエーション豊かな葬送儀礼は、島々で構成される地理や南島特有の風土に根ざすとともに、本土の墓石文化との融合や中国の影響が幾重にも積層した結果だ。なかでも本土と南方世界がせめぎ合った境界に位置する奄美地方では、琉球王国の陵墓や薩摩とのかかわりを反映した多彩な墓制が展開した。

庶民の墓にも影響を与えた琉球王朝の墓所、玉陵=那覇市

 関根さんがこのほど刊行した「琉球・奄美の葬墓制」(新泉社)は、先史時代からグスク時代、琉球王朝時代、そして近現代にいたる沖縄・奄美の人々が先祖と向き合ってきた営みを丹念に読み解く。

 火葬がほぼ100%を占めるという現代の日本。生者と死者の距離が近く、古来の慣習が祖先崇拝や来世観に色濃く息づいてきた琉球弧でもその伝統は消えつつある、と関根さんはいう。かろうじて残るのは親類一同が墓前で定期的に行う、お供えの共食くらいか。「奄美・沖縄でも墓が無縁化して遺跡化し、葬送儀礼や慣習も消えている。だから、いま記録しておかないと」

 ところで、なぜ北のエキスパートが南の世界を?

 「北も南も交易型社会で、奄美やアイヌも薩摩や松前藩に対した歴史を持つ、パラレルな存在なんです。そこで比較検討してみようと。どちらも厚葬で、死者への熱い思いがありますね」

 端から端まで約3千キロにも及ぶ長大な日本列島。島嶼(とうしょ)という空間的特性がはぐくんだ文化の多様性と、はるかな過去からの精神世界の連続性を、南島の墓制は改めて教えてくれる。(編集委員・中村俊介)=朝日新聞2026年7月1日掲載