まなつ&まふゆさんの絵本「君がいるから」 あなたも私も一つの星のような大切な存在
――メッセージ絵本『君がいるから』は、猫とペンギンの日常を通して、「ありのままの自分を認めること」や「誰かと共に生きることの尊さ」を伝える作品。SNS総フォロワー数は10万人を超え、本書は現在16刷、7万7500部を記録し、多くの読者の共感を集めている。本書のシンプルなタイトルには、実は二つの意味が込められているという。
まふゆ:一つは、自分が相手を見るという意味です。「君がいてくれるから、私は生きていける」という、一般的に受け取られる意味ですね。でも、もう一つの意味があります。それは、「君」という言葉を自分自身に向けて読むということ。自分がいるからこそ、この世界が存在する。そう考えると、自分は思っている以上に大切な存在なのだ、というメッセージを静かに込めました。この絵本には、一緒に作品づくりをしているパートナーへの思いや、普段はなかなか言葉にできない気持ちも含まれていて。ある意味では、愛の告白のような作品でもあります(笑)。
――登場するのは人間ではなく、やさしい水彩画で描かれた猫とペンギン。涙を流したり、ときには無邪気な表情を見せたりと、その姿はどこか人間らしい。しかし、あえて動物を主人公にしたのには、明確な理由がある。
まふゆ:人間を登場させると、見た目とか人種とか、どうしても先入観が生まれてしまうんです。絵って一つの言語だと思っているので、先入観なしに受け取ってもらえるようにしたかったんです。ペンギンを選んだのは、南極についてのドキュメンタリー番組を見たことがきっかけでした。厳しい環境でも耐え抜いて生きているペンギンの姿が、自分が描こうとしていた世界観と重なって、すごく感動したからです。
猫は、長年一緒に暮らした愛猫への思いから生まれた存在でした。絵本の中には、まったりと横になる猫も登場していますが、それはわが家の猫が亡くなってから描いた一枚です。イベントでこの絵を持っていくと、どの会場でも一番人気で……。ご自身の愛猫の話をしてくれる方もいて、悲しかった思い出が温かい記憶に変わっていきました。
――家でくつろぐ時も、旅に出る時も、いつも寄り添う猫とペンギンは、読む人によって夫婦にも、友達にも、家族にも映る。しかし、二人が描きたかったのは特定の関係性ではない。
まなつ:夫婦でも友達でも恋人でもなく、太陽と地球のような関係です。太陽が地球のために輝いているわけではないように、相手を変えようとしたり、何かを求めたりするのではなく、ありのままでいることが、自然と相手に恵みをもたらす。そんなふうに、お互いを大切にし合える関係を描きたいと思いました。読む人それぞれが、自分にとって大切な誰かを重ね合わせながら読んでもらえたらうれしいです。
――まふゆさんが物語の原案と絵をつくり、まなつさんが全体の雰囲気や伝わり方を調整する。一冊が生まれるまでには、ほぼ毎日、いい意味で衝突しているという。その積み重ねによって、作品は磨かれ、より多くの読者に寄り添うやさしい世界観へと仕上がっていく。
まふゆ:意見が合わないことは、もうしょっちゅうで。毎日です(笑)。もともとの絵や文章は、現実的でどこかクールな手触りがある。そこへまなつが「ここ、もうちょっと柔らかくした方がいいと思う」とアドバイスをくれます。ただし、どう直せばいいかは本人もわからない。「これじゃないって言うけれど、ではどうすればいいの?」と聞いても、うまく説明できないんですよね(笑)。でも、そのセンスがすごく鋭くて。
まなつ:ちゃんと説明できているつもりですが……。
まふゆ:まなつからの指摘を受けて修正し、時には思いがけないものが生まれ、また直していきます。まなつがいなかったら、この本は完成していなかったですね。
――作品の核心にある言葉、「自分のことを100%知っているのは自分だけだから、君を絶望の淵から救うことができるのは君だけなんだ」。その言葉の根底には、作者が大切にしている「自分との向き合い方」がある。
まふゆ:一人ひとりは、一つの星のような存在だと思っています。地球と火星を比べて「どちらが優れている」とは言いませんよね。人も同じで、自分が持っていない誰かになろうとする必要はないし、誰かと比べる必要もありません。
「自分を認めてほしい」と他者に求めると、認めてもらえなければ苦しいし、認めてもらえたとしても、「いつか失ってしまうのでは」と不安になります。でも、自分で自分を認めることができれば、その不安から少し自由になれる。自分を救えるのは、最後は自分自身なんです。
――作品はフランス、韓国、台湾、タイでも出版されるなど、国や文化を超えて読まれている。海外の読者から寄せられた反響と、その先に見えた思いとは。
まなつ:フランス版が出版されたとき、現地の読者から印象的なメッセージが届きました。お孫さんと一緒に読んでいたおばあさんが、赤い糸の場面で「僕たちも赤い糸で結ばれているんだね」とお孫さんから言われたそうです。それを読んだとき、本当にありがたくて、心が温かくなりました。
まふゆ:この本が語りかけているのは、国に関わらず、どこにでもいる、ごく普通の人たちです。それぞれに自分だけの世界があり、それを大切にしながら他者と関わることで、その世界は少しずつ広がっていく。だから、人と比べたり、自分を否定したりするのではなく、自分自身にも、人に向けるのと同じくらい優しくあってほしいと思います。
――もし太陽と地球のように静かに寄り添う猫とペンギンにその後の物語があるとしたら、どんな日々を過ごしているのかを尋ねてみた。
まなつ&まふゆ:喧嘩して、仲直りして、また笑って——その繰り返しじゃないかな。元気に、健康に、楽しく暮らしていると思います。世の中の人たちは、SNSに投稿するような特別な日を期待しがちだけれど、そんな日ばかりではない。ご飯を食べて、散歩して、日記に何も書けなかったような日。そういう、何でもない平凡な日が、実は一番大事だと思っていて。
これからも描いていきたいのは、壮大な物語ではなく、喜びや悲しみといった、誰もが経験する小さな出来事です。日々の暮らしの中で生まれる、ごく自然な感情に寄り添う物語を描き続けたい。人生の正解を示したいわけではありません。ただ、人が生きる中で抱くさまざまな感情を見つめていきたいのです。読んでくださった一人ひとりが、自分自身の物語として受け取れる作品を届けていきたいと思っています。