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「テクノ・クーデター」書評 政治を左右するテック企業の力

評者: 高谷幸 / 朝⽇新聞掲載:2026年07月04日
テクノ・クーデター: 民主主義崩壊とシリコンバレーの野望 著者:マリエッチェ・スハーケ 出版社:早川書房 ジャンル:ビジネス・経済

ISBN: 9784152105257
発売⽇: 2026/05/21
サイズ: 13.1×18.8cm/392p

「テクノ・クーデター」 [著]マリエッチェ・スハーケ

 第二次トランプ政権発足に際した大統領就任式に、主たるテック企業のトップが揃(そろ)って臨んだことは記憶に新しい。その姿は、自らのビジネスに資するよう政治に働きかけてきたテック企業の現在地を示している。
 テック企業が力を増すなか、デジタルテクノロジーは、世界中で民主主義や政治に大きな影響を与えるようになっている。偽情報は、米国で議会議事堂襲撃事件の発生につながり、日本を含め各国で選挙結果を大きく左右する。サイバー攻撃は企業や個人を標的とするだけでなく、今や敵国への「兵器」としても使われる。通貨や犯罪捜査、さらには戦争と、主権と安全保障に関わる分野もまたデジタル化を通じて民営化されている。
 テクノロジー利用を支えるインフラ面でも企業活動が政治を左右する。半導体の供給は地政学と結びつく一方、データセンターの建設は秘密裡(り)に行われ、地域の民主主義を危機に晒(さら)している。
 こうしたテクノロジーとテック企業の強大な影響力は自(おの)ずと生じたわけではない。テック企業がイノベーションを武器にロビー活動を駆使し、規制から逃れようと働きかけてきた結果、これら企業の活動には緩い規制しかかけられず、説明責任を回避できる構造になっている。同時に、企業の莫大(ばくだい)な資金力、テクノロジーの進化に対する楽観的な期待や専門性の欠如という政治家の課題、さらには立法者が情報にアクセスできないという状況もまた、規制を難しくさせてきた。
 テクノロジーが公共の利益を脅かしている世界各地の例に目配りをした上で、著者は、テック企業が民主主義を犠牲に権力を掌中に収めてきた状況を「クーデター」と呼ぶ。その舌鋒(ぜっぽう)は鋭い一方、民主主義を取り戻すことの必要性とその方策を説くくだりはやや新規性に欠けるかもしれない。が、民主主義の原則を真っ当に訴えねばならないほど、その危機が深いともいえるだろう。 
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Marietje Schaake 米スタンフォード大サイバー政策センターの国際政策ディレクター。元欧州議会議員。
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江口泰子訳