永田礼路「まどいのいきもの 銀河生物観察記」 架空の新種から生まれるドラマ
早川いくを『へんないきもの』、今泉忠明『ざんねんないきもの事典』など、奇妙な生物を題材としたベストセラーは少なくない。本作に登場するのも、実に不思議な生き物たちだ。
自他ともに認める優秀なビジネスマンの肝臓に、ヒトデが寄生していることが判明。放置すると肝機能に障害が出るが、そのヒトデの分泌物には記憶力や情報処理能力を向上させる効果があるという。つまり、自分は“デキる男”と思っていたのはヒトデのおかげだったのか……と、落ち込む彼。
もちろん、それは架空の生物だ。遠い星の爆発による「銀河風(テンペスタ)」の影響で新種の生物が次々発見されている世界の話である。が、新種マニアの医師が語る生物たちの生態には現実味あり。さらに、図鑑的解説のみならず、そこに生じる人間ドラマが滋味深い。
なかでも出色は、骨に寄生するカニにまつわる一編。特に害はないものの発見されれば摘出する人が多い小さなカニを、そのままにしておくことを選んだ男の人生の物語が胸を打つ。「目的がなければ生きてちゃいけないってわけじゃないですしねえ」という医師の言葉も示唆に富む。生物も人生も多様性が大事。SF的想像力を日常に落とし込んだ珠玉の連作集である。=朝日新聞2026年7月4日掲載