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獣医師を志す大学生に向き合う「リラの花咲くけものみち」 岩井圭也が薦める文庫この新刊!

  1. 『リラの花咲くけものみち』 藤岡陽子著 光文社文庫 990円
  2. 『星の教室』 高田郁著 ハルキ文庫 792円
  3. 『おやじはニーチェ 認知症の父と過ごした436日』 高橋秀実著 新潮文庫 781円

    ◇

 人に教えることは難しいが、人から教わることもまた難しい。特に年齢や経験を重ねると、積極的に教えを求める姿勢がない限り、学びの機会は少なくなっていく。

 (1)は獣医師を志す大学生の物語。北海道の北農大学獣医学類に入学した岸本聡里は、授業や実習、仲間との交流を通じて成長していく。ただしその道のりは必ずしも順調ではない。人間関係に悩んだり、獣医師の仕事の過酷さに直面して逃げ出したりもする。複雑な家庭事情を抱えているが、祖母・チドリだけは常に味方でいてくれる。たくさんの人に支えられながら、聡里は自分なりの学びを深めていく。

 学ぶことに年齢や経歴など関係ないと思わせてくれるのが(2)。同級生からの暴力で中学校に通えなくなった過去を持つ潤間さやかは、二十歳の春に河堀夜間中学の存在を知り、躊躇(ためら)いながらも入学を決める。そこでさやかは、戦争で孤児になった蕗子、板前見習いの健児、ベトナム出身のスアンら仲間たちと出会う。「ここの生徒さんにとって、ものを教えてくれるひとは、誰でも皆、『先生』なんですよ」という台詞(せりふ)が心に染み入る。

 学校の外にも学びはある。(3)は著者が認知症の父と過ごした日々の記録。著者は呼びかけを無視し、質問をはぐらかす父の姿から哲学的考察を深めていく。「『混乱』はありますか?」と尋ねると「混乱はどこでもやってます」と答える父は、ある時はニーチェとなり、ある時はサルトルとなる。私たちは忘れるから幸福になれる――父との暮らしから学びを得る著者に共感。=朝日新聞2026年7月4日掲載