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戦国小説の新潮流「嗚呼、元の木阿弥」 武川佑が薦める文庫この新刊!

  1. 『嗚呼(ああ)、元の木阿弥』 中南(なかみなみ)元伸著 文芸社文庫 814円
  2. 『大谷吉継の終わらない関ケ原』 白蔵盈太(しろくらえいた)著 PHP文芸文庫 979円
  3. 『乱世の流儀 室町ワンダーランド』 清水克行著 文春文庫 968円

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 長大で重厚な大河小説とは違った、戦国小説の新潮流をご紹介。(1)は奈良の大名筒井順昭(じゅんしょう)の影武者を務めることになった《いかがわしい》按摩(あんま)師木阿弥(もくあみ)が陰謀劇に巻きこまれる。「御館さま」となった木阿弥の目線で、領国内国衆の争いの裁定、正妻の家中取り仕切りや側室の流転など、大名の日常が丹念に描かれる。畿内でも柔らかい奈良言葉と、落語や講談を聴くかのような軽妙な調子が実に心地よい。サゲも洒落(しゃれ)ている。

 源範頼を描いた『義経じゃないほうの源平合戦』など捻(ひね)った人選とタイトルとで注目される作者の(2)は、石田三成の《親友》で関ケ原合戦で敗死した大谷吉継が主人公。彼がなんどもタイムループし関ケ原の結果を変えようとする。小早川秀秋の裏切り阻止か、石田三成の人望のなさを変えるか――吉継の奮闘と裏腹に変わらない関ケ原の勝敗。「ループもの」は『時をかける少女』や『僕だけがいない街』など傑作が多いが、本作の結末は歴史の複雑さをあぶり出す。

 これら自由な発想で戦国時代の小説が書かれるようになった背景には、中世日本の社会学的解像度があがったことが理由の一つに挙げられる。自力救済の荒々しい《ハードボイルド》室町時代の研究を牽引(けんいん)するのが『喧嘩(けんか)両成敗の誕生』などの著作がある清水克行だ。(3)は室町時代の風俗、社会秩序、宗教等をめぐる一般読者へ向けたエッセイで、小ネタの宝庫。第五章「歴史家の頭の中」の歴史家の情熱/史料への沈潜/研究の文脈の関係性論に評者は頷(うなず)かされた。=朝日新聞2026年7月25日掲載