ISBN: 9784591189269
発売⽇: 2026/04/15
サイズ: 18.8×1.7cm/238p
「シーラカンスに会いに行く」 [著]高野真吾
ちくわを見るたび、同じくらいの柔らかさというシーラカンスの脊柱(せきちゅう)に思いを馳(は)せる……。これまで10回は通った沼津港深海水族館で世界唯一の冷凍体展示を含む5体のシーラカンス標本を見つめてきた身として、シーラカンスに「会う」を追った本書は必読でした。
まずは本の扉に三つ折りされた大きな全体像、さらに各部位の解説。かつて絶滅したと考えられていたシーラカンスが、ビジュアルからしっかりと紹介されます。
1938年の歴史的発見の経緯でワクワクさせる第1章。現生シーラカンス2種の学名に含まれる「ラティメリア」の由来となった第一発見者は博物館職員コートネー・ラティマーさん。彼女が発見直後に頼ったのが「大学の化学教授で大の魚好き」というJ・L・B・スミス博士で良かった。二人の手紙のやり取り、特にスミス博士の化学者としての理性とロマンが交差する興奮した文面が印象的です。発見が世界に認められるまでの苦労がしのばれます。
ネットで「かわいい」「ゆるい」と話題になったコートネー・ラティマーさんによるシーラカンスのスケッチは、捕獲後の腐敗が進む中、急いで描いたもの。そこに至る熱意を知ると、むしろ他の魚との違いをよく捉えた名スケッチに違いないのです。
第3章の沼津港深海水族館の経営視点での工夫も、ファンとして納得。開設の目玉として金沢の男性から購入したシーラカンス標本は、主に1980年代に活動した日本シーラカンス学術調査隊による成果です。
その活動内容と、スポンサーであった金沢の男性の存在。希少生物の保護や研究には第5章「世界のオタクたちの情熱」や第6章「愛されて街へ」のような愛着も必要ですが、やはり経済的な面も大きいと感じた第4章でした。柔らかい脊柱を硬い鱗(うろこ)で覆うシーラカンスのようにバランスを保つのが、長く活動するコツでしょうか。
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たかの・しんご 1976年生まれ。ジャーナリスト、元朝日新聞記者。著書に『カジノ列島ニッポン』など。