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「遅れ時計の詩人―編集工房ノア著者追悼記」書評 芯のある出版の姿が見えてくる

評者: 蜂飼耳 / 朝⽇新聞掲載:2017年11月26日
遅れ時計の詩人 編集工房ノア著者追悼記 著者:涸沢 純平 出版社:編集工房ノア ジャンル:本・読書・出版・全集

ISBN: 9784892712814
発売⽇: 2017/09/28
サイズ: 20cm/287p

表現者たちとの熱い交わり模様、亡き文人たちを語る惜別のことば…。関西で唯一の文芸専門出版社「編集工房ノア」の主が綴る出版物語。ノアの略年史も収録する。【「TRC MARC…

遅れ時計の詩人―編集工房ノア著者追悼記 [著]涸沢純平

 関西の重要な文芸専門出版社・編集工房ノアは、独自の判断と価値観を貫いてきた。本書は、その社主である涸沢(からさわ)純平が折に触れて綴(つづ)った著者たちとの交流、追悼の文章などから成る。ひっそりとした佇(たたず)まいの中、硬軟自在に織り成されるその文章は、いくつもの生と死を見つめて歩む。
 言葉を扱うことの基底にある人と人とのやりとりの、最も大切なかたちが、そこなわれずに保たれ、ここにある。大阪で活躍した詩人・港野喜代子。蒲鉾(かまぼこ)店で働きながら詩を書いた清水正一。本居春庭の評伝を著した足立巻一。出版業に携わりながら詩を書き三十代で没した黒瀬勝巳。ユーモアのある詩が愛されいまも読み継がれる天野忠。
 巻末の広告を見ていて、どの本も読みたくなる。本は精神、思考、心情を運ぶものなのだと改めて思う。ものを書くとは、他の人の言葉を読みながら、受け取りながら、進んでいくことだ。心ある出版、芯のある出版の姿が見えてくる。