アンと教授の歴史時計(2) [作]もとなおこ
イギリスを舞台にしたタイムトラベルもの。18〜20世紀のさまざまな歴史の局面を主人公が渡り歩き、史実を背景にしたミステリアスなエピソードが展開される。
主人公の少女は、人々の破壊されてしまった未来を修復する役目を負う。彼女も自身の未来を乱され、放っておけば1年後には命を失う運命を抱えているのだ。
伝統的な少女まんがらしい華やかで軽やかな読み味のまま、厚みある歴史ドラマが展開される。そのバランスがみごとだ。作中で描かれるのは、たとえばイギリス初の本格的な英語辞典を編纂(へんさん)したサミュエル・ジョンソン、グリニッジ標準時を毎朝精密時計で顧客に配達する、一風変わったビジネスに取り組むルース・ベルヴィルなど、思いがけない人にスポットがあたる。狂言回しのように小説家H・G・ウェルズ、宰相チャーチルなども加わり、心おどる歴史の万華鏡が繰り広げられる。
歴史の題材の面白さや、ラブロマンスもからめた物語展開に加え、最新の2巻では、主人公の抱える死の運命が、激動の時代を生き抜く人々の姿と重なりながら、大きなテーマへとふくらみ始めている。続刊が楽しみだ。=朝日新聞2017年5月21日掲載