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池澤春菜が薦める文庫この新刊!

  1. 『忘れられた花園』(上・下) ケイト・モートン著 青木純子訳 創元推理文庫 各1058円
  2. 『図書館の魔女 烏(からす)の伝言(つてこと)』(上・下) 高田大介著 講談社文庫 各842円
  3. 『空棺(くうかん)の烏』 阿部智里著 文春文庫 756円

 別世界へ心を誘うファンタジーを三作。
 (1)は三代にわたる女性たちが紡ぐ物語。現代に生きるカサンドラ、その祖母で謎に包まれた生い立ちのネル、そして全ての発端となった童話作家イライザ。三者三様の運命に秘密と謎が絡み合い、ぐいぐいと奥へ引きずり込まれる。二転三転する謎は、薔薇(ばら)の花が綻(ほころ)ぶように魅力的で目が離せない。
 (2)は第45回メフィスト賞受賞作の続編。もし前作を読んでいなかったら、ぜひそこから始めて欲しい。本の厚みも物語の厚みも凄(すさ)まじい。でも全てを忘れて、この物語の虜(とりこ)になるだろう。世界に誇れる和製ファンタジーの傑作。
 (3)もまた、和の世界観が美しいファンタジー。人に変化する八咫烏(やたがらす)達が住まう異世界。平安さながらの権謀術数渦巻く宮廷絵巻、生き生きとした登場人物と、魅力的な謎。4巻目となる(3)は、なんと学園ものだ! このシリーズを今から読み始める人が羨(うらや)ましい。私も記憶喪失になって1巻からまた読み返したい。=朝日新聞2017年06月18日掲載