平昌パラリンピックの余韻から、選手たちの素顔を知りたくなり、『義足でダンス 両足切断から始まった人生の旅』(エイミー・パーディ、ミシェル・バーフォード著、藤井留美訳、辰巳出版・1944円)を手にとった。著者エイミーは2014年のソチ・パラリンピック、スノーボードクロス競技で銅メダルをとった米国女性。リオ・パラリンピックの開会式では、ロボットとのダンスを披露した。
19歳で細菌性髄膜炎にかかり両足を切断、腎臓移植手術も受けるなど、著者自身が語る試練と挑戦の半生である。両足切断を決めたとき、著者は「どうにか正気を保つため」、「自分を憐(あわ)れまない」「スノボを再開する」などの目標をたてる。しかし、両足義足のスノボ経験者は見つからず、まさに手探りで道を切り開いていく。
常に自分を鼓舞する著者だが、初めて見た義足のカッコ悪さに泣いたり、ボーイフレンドが義足をどう受け止めるか気にしたり、そんな日常も描かれる。
著者のエネルギーが伝わる1冊だ。
(久田貴志子)=朝日新聞2018年4月21日掲載
編集部一押し!
- インタビュー 恩田陸さん「spring」 バレエの魅力、丸ごと言葉で表現 朝日新聞文化部
-
- 朝宮運河のホラーワールド渉猟 黒木あるじさん「春のたましい」インタビュー 祀られなくなった神は“ぐれる”かもしれない 朝宮運河
-
- 杉江松恋「日出る処のニューヒット」 諷刺の名手・柚木麻子が「あいにくあんたのためじゃない」で問うたもの(第13回) 杉江松恋
- 小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 【特別版】芥川賞・九段理江さん「芥川賞を獲るコツ、わかりました」 小説家になりたい人が、芥川賞作家になった人に聞いてみた。 清繭子
- インタビュー 「親ガチャの哲学」戸谷洋志さんインタビュー 生まれる環境は選べない。では、どう乗り越える? 篠原諄也
- BLことはじめ BL担当書店員が青田買い!「期待のニューカマー2023」 井上將利
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社