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精神の解放と自立、テンポよく

セクシー田中さん(1) [作]芦原妃名子

 こんなタイトルだがエロいマンガではない。田中さんは40歳の独身OL。“経理部のAI”と呼ばれるほど仕事はできるが地味で暗く社交性も乏しい。セクシーとは対極にあるようなキャラである。
 しかし、その田中さんが実はアスリート並みに引き締まったスタイルの持ち主であることに気づき、興味津々なのが23歳の派遣OL・朱里(あかり)。男子ウケするゆるふわな容姿を武器に絶賛婚活中だが、〈初めてもらった給与明細を見た時に一生独りでは生き抜いていけないと思った〉彼女が望むのは、玉の輿(こし)ではなく「堅実」で「普通」の生活だ。
 朱里を語り手としたドラマは、コメディタッチながら痛々しく鋭い。年齢や外見や勤務先でお互いを値踏みする男と女。合コン相手の男たちの無自覚かつ失礼な言動は昨今のセクハラ問題にも通じる。一方で女たちの側にも自家撞着(どうちゃく)的な部分がなくはない。
 そんななか、朱里はたまたま入ったペルシャ料理店で会社の顔とは別人の田中さんに遭遇。興味が憧れに変わるとともに朱里自身も変わっていく。精神の解放と自立、その先にある自己肯定。シビアなテーマを絶妙の抜け感で、しかしキッパリとテンポよく描く筆さばきは痛快だ。=朝日新聞2018年5月12日掲載