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「ストレッチ 少ないリソースで思わぬ成果を出す方法」 「手持ちの駒」を最大限に活用

ストレッチ 少ないリソースで思わぬ成果を出す方法 [著]スコット・ソネンシェイン [訳]三木俊哉

 有能なスタッフ、最新の設備、潤沢な資金……。目指す成果を上げるには、あれもこれも足りない。そんな焦燥に駆られ、絶えず何かを求め続ける――こうしたやり方に馴染(なじ)みのある人も多いだろう。
 それに対し、手持ちの駒でやり繰りする考え方を「ストレッチ」と呼ぶという。ないものねだりをするのではなく、あるものを最大限に活用。創意工夫を凝らして、組織や個人の可能性を引き出すのだ。
 本書は、多様な実例や研究成果をもとに、ストレッチの利点を説き、発想の転換を促す。人は他者と比べることで自己を評価するもの。多くを持つ者との比較は人を苦しめるが、ストレッチによって“自分の芝生も青い”と気づけば不安も和らぐ。仕事や人生の充実につながるワークスタイルというわけだ。
 綿密な計画よりも行動ありき。ジャズの即興のごとき柔軟さで、状況変化に対応するのがストレッチの極意か。地球規模でリソースが不足する21世紀。所有ではなく活用を重視するのは、時代の潮流といえよう。制約こそが創造性を高める、先入観を持たないアウトサイダー(例えば、男性社会における女性)の視点が問題解決に役立つ、との指摘が心に残る。=朝日新聞2018年6月9日掲載