少子高齢化社会で日本の人口は減っていく。今さら改めて言われなくても、日本人なら誰でも知っている話だ。とはいえ、そうは言っても何とかなるだろうと楽観的に考えている人も少なくないのではないか。江戸時代には日本の人口は3千万人足らずだったのだから、同じぐらいに人口が減ったとしても大丈夫だろうという楽観。生産年齢人口が減っても、無理して経済成長しなくていいという楽観。江戸時代のような質素な暮らしに戻ればいいといった楽観。
ところが本書を読むと、そういう楽観の数々は徹頭徹尾、ことごとく打ち砕かれる。著者は「今後の日本の高齢社会とは、『高齢者』の高齢化が進んでいく社会でもあるのだ」と書く。74歳以下の前期高齢者は企業も政府も雇用の即戦力として未来に期待しているが、この層の人口はいったん増加に転じるものの、2040年代以降は減っていってしまう。また現状は都市に人口が集中し、地方の過疎化が問題視されているが、東京でさえも25年をピークに減少に転じる。そして地方のひとり暮らしの高齢者が東京に流入するようになり、東京の福祉は崩壊に瀕(ひん)する。
このような数字が次々と提示され、頭がクラクラとしてくる。だが本書が非常にすぐれているのは、ただ危機を煽(あお)るだけでなく、最後に明快かつリアリティーを持った処方箋(せん)が提示されていることだ。サービス過剰な「便利過ぎる社会」から脱し、非居住エリアをきっちり定めてコンパクトシティー化を進める。遠く離れた自治体の大規模合併も考え、市町村単位の生き残りは求めない。国際分業を徹底し、よけいな産業は捨てる。都市と地方を移動しながら暮らすライフスタイルを定着させる。過激ではあるけれども、どれも具体的で実効性を信じられる。「江戸に戻れ」「みんなで貧しくなればいい」などの空疎なスローガンではなく、今こそ本書のような具体的な議論を始める時期が来ている。
◇
講談社現代新書・821円=14刷24万部 17年6月刊行。幅広い層に売れているが、若い人の関心が高いという。「へたなホラー映画よりもこわくて、おもしろい」との反響もあった。=朝日新聞2017年9月17日掲載
編集部一押し!
-
信と疑のあいだ のんびり無防備「路地ネコ」 青来有一 青来有一
-
-
一穂ミチの日々漫画 【一穂ミチお薦め】友情を考える漫画特集 それぞれの人生、かけがえのない人間ドラマ 一穂ミチ
-
-
新作映画、もっと楽しむ 映画「未来」黒島結菜さん・北川景子さんインタビュー 湊かなえ原作、絶望に見いだす禁断の光 かわむらあみり
-
人気漫画家インタビュー 「スキップとローファー」高松美咲さんインタビュー 原点は司馬遼太郎作品 メッキが剥がれた先にある人間関係を深く描く 加治佐志津
-
インタビュー 「すしを極める」すし作家・岡田大介さんインタビュー 釣った魚の握りずしから郷土寿司まで、“本当に旨い食べ方”は? 江澤香織
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版
-
インタビュー 湊かなえさん「暁星」インタビュー 作家として「言葉」に向き合い、新たな扉開いた PR by 双葉社