貧困や格差問題を追う雨宮処凛氏が、就職氷河期からずっと非正規で働いてきた独身女性にインタビューした『非正規・単身・アラフォー女性 「失われた世代」の絶望と希望』(光文社新書・842円)。著者自身がフリーランス43歳の独身女性で、2年前に賃貸住宅の入居審査に落ち「社会的信用の低さ」を思い知らされた。だからこそ共感をもって引き出せた女性らの本音や不安がつづられている。
日雇い・派遣で237社で働いた女性は、お漏らししてもラインを止めないデザート工場の実態を明かす。「人間扱い」されないことが「辛(つら)い」と言う。団塊ジュニア世代だが「自分の生活で手一杯で、これ以上、(子どもの)責任負えない」と言い切る別の女性の言葉が少子化を裏打ちする。
だれしも結婚、出産、親の介護の問題に直面するが、不安定な収入が不安を深刻にしている。それを自己責任だけで片付けられるのか。いったん非正規になったら、正社員にはまずなれない、戻れない、そんな社会でよいのかどうか考えたい。
(久田貴志子)=朝日新聞2018年6月16日掲載
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