伊集院静「ノボさん―小説正岡子規と夏目漱石」書評 あふれ出てくる句と食欲
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2014年01月19日
ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石
著者:伊集院 静
出版社:講談社
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784062186681
発売⽇: 2013/11/22
サイズ: 20cm/404p
ノボさん―小説正岡子規と夏目漱石 [著]伊集院静
俳人、正岡子規の生涯をたどった長編小説。野球に夢中になった、おおらかな青春時代から、病床に縛られた苦しい晩年まで、やわらかな筆致でたどる。
家族や友人はみな「ノボさん」と親しげに呼びかける。なかでも、夏目漱石との交流に、著者が心ひかれた思いがよく伝わる。落語好きで気があったふたり。高慢な態度を意味する「漱石」を子規も名乗ろうと考えていた、というエピソードは面白い。作品から淡い恋心をくみ取って、子規を誰よりも理解していたのが漱石だった。
あふれ出てくる句と食欲。懸命に走り抜けた姿を、楽しく、流れるように描きあげたことが、その死を大きく意味付ける。
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講談社・1680円