戌井昭人「すっぽん心中」書評 日常と地続きの狂気を笑いに
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2013年10月20日
すっぽん心中
著者:戌井 昭人
出版社:新潮社
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784103178231
発売⽇: 2013/08/30
サイズ: 20cm/123p
すっぽん心中 [著]戌井昭人
ひどいむち打ちで首が横を向いたままの男、田野。小便をするとき、体は便器に、顔は壁に向ける。とまじめにつづる冒頭からおかしくてたまらない。
田野は、上野でモモという少女に出会う。2人は偶然見かけたグルメ番組ですっぽん料理の高額さに浮かれ、霞ケ浦まですっぽんを捕りにゆく。淡々としたおかしみが急展開するのは、すっぽん生け捕り後。田野は指をかまれて流血、それを見たモモは、感情の見えない少女から急変、まがまがしい凶暴さを見せる。
殺人事件に執着する「植木鉢」、鳩(はと)に執着する「鳩居野郎」を収録。いずれも日常と地続きの狂気を笑いに包む。力のぬけ具合がいい。
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新潮社・1470円