背筋さんが語る職業としてのホラー作家 「誰かの死」扱っている事実 忘れず
――背筋さんがどんな風にホラー作家になったのか教えてください。
昔からホラー作品が好きで、自分でも書いてみようと思い立ちました。それがデビュー作の「近畿地方のある場所について」です。作家を目指していたわけではなく、小説を書いたのも初めてだったのですが、小説投稿サイトに載せてみたら大きな反響をいただいて、書籍化につながりました。最近では私のようなネット出身の作家も珍しくありません。
――いつごろから怖い話を読むようになったのですか?
幼い頃から「ゲゲゲの鬼太郎」などが大好きでした。「怪談レストラン」などの児童書から、鈴木光司さんの「リング」のような大人向けのホラー小説まで、小・中学生の頃に読みあさりました。もっとも本だけ読んでいたわけではなく、友だちと遊んだりゲームをしたり日々忙しかった。好きなものがたくさんある中に、ホラー小説があったという感じです。
――こどもの頃になりたかった職業は?
特になかったんです。私は平成元年生まれで、「ゆとり教育」の直撃世代。好きなことをやりなさい、夢に向かって進みなさい、という圧力を常に受けていて、それが息苦しかった。大志なんて抱かなくていいじゃないか、と思っていました。大学に進学し、データサイエンスという分野を学んで、ある企業に就職しましたが、深い考えがあったわけではありません。
――33歳で作家デビューした後も、しばらく会社勤めをされていたとか。
会社をやめる気はなかったんですが、作家業が忙しくなって、兼業生活が不可能になりました。不安はもちろんありましたよ。でも生まれた時から好景気を知らない世代だし、どんな仕事を選んでもリスクはある。せっかく機会を与えていただいたし、しばらく専業作家でやってみようと思いました。
――ホラー小説家という職業で生計を立てるのは大変ではないですか。
大変です。ほとんどのホラー作家さんは、並行してミステリーも書かれています。ホラーはどうしても好き嫌いがあるジャンルなので読者数が限られている。じゃあ他のジャンルが楽なのかといえばそうでもない。この時代、小説家で生きていくのは並たいていのことではありません。自分の可能性を狭めず、やったことのない仕事でも引き受けるようにしています。
――出版不況と言われる時代、作品を届けるために心がけていることとは。
確かに面白い作品を書いていれば、読んでもらえるという時代ではありません。小説は映画やマンガに比べて、難しそうというイメージを持たれがちなので、手に取ってもらうための工夫が必要です。それとホラーは「誰かの死」を扱うことが多いジャンル。エンタメ小説が過度に倫理的である必要はありませんが、その事実を忘れずにいたいと思っています。
「幽霊屋敷」「化け猫」などのテーマに沿って怖い話を集めた児童書シリーズ。内容や語り口がバラエティーに富んでいて、日本の話もあれば海外の話も。ホラーは様式美が重視されることが多いジャンルですが、それを軽々と飛び越える発想の自由さにすごく影響を受けました。これから何かを書こうとする人は、児童書とあなどらず読んでみることをおすすめします。
文庫本で5巻もある大作ですが、読み出したら先が気になって、ほぼ一気読みでした。とにかく怖くて面白い、でもそれだけでは片づけられない圧倒的なパワーのようなものを感じます。自分の考えるホラー小説の頂点ですね。ホラー小説家という職業を目指すのなら、そのトップ・オブ・トップにいる小野不由美さんのすごさに触れて、一度は打ちのめされてください。
◇次回は絵本作家の鈴木のりたけさんが登場予定です。