「絵本の魔法」書評 創造の謎への追求が迫ってくる
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2013年09月08日
絵本の魔法
著者:司 修
出版社:白水社
ジャンル:児童書・絵本
ISBN: 9784560083178
発売⽇:
サイズ: 20cm/308p
絵本の魔法 [著]司修
画家、作家、装丁家である著者はまた、多くの絵本に絵を描き、自身も絵本を創作してきた。初めて絵本の絵の依頼を受けた「ひろすけ絵本・みにくいあひるのこ」の当時、心臓手術を受ける治療費のため子どもの絵画教室を始め、入院に備えたとたん病院が閉鎖され、なぜか手術も不要になった話。自身が絵をつけた宮沢賢治やミヒャエル・エンデの本、妻の故郷・奄美大島の語り伝え……単に絵本の由来を語るのではなく著者の来し方や芸術への希求、創造の謎への追求が迫ってくる。立ち戻る原風景は空襲で焼け払われた子ども時代の前橋の町。大佛次郎賞を受けた『本の魔法』以上に「魔法」に満ちているのは、絵が魔法の一種だからだろうか。
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白水社・2100円