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贈り物の季節、大切な人にいつまでも色あせない絵本を

 今年もまもなくクリスマスがやって来ます。大切な人に、いつまでも色あせない絵本の贈り物はいかがでしょうか? 「好書好日」では、2000年以降に出版され増刷を重ねている人気絵本を「えほん新定番」として、作家のインタビューとともに紹介しています。その中から、贈りたい相手の年齢に合わせた作品をあらためて紹介します。

0~2歳へ贈りたい、感覚で楽しめる絵本

・「くっついた」(三浦太郎さん)
 イラストレーターとして活動していた三浦さんが、娘が生まれたのをきっかけにつくった絵本。なかなか笑わない娘にどう接していいか分からず戸惑っていたある日、ほっぺたをぎゅうっとくっつけてみたら、初めて笑ってくれたそうです。それがヒントとなって、サルやゾウなどいろいろな動物たちが「くっつく」ことが絵本のテーマになりました。育児の経験から生まれた作品はほかに『なーらんだ』『わたしの』があります。

>【えほん新定番】「くっついた」三浦太郎さんのインタビューはこちら

『くっついた』(こぐま社)より
『くっついた』(こぐま社)より

・「まる さんかく ぞう」(及川賢治さん・竹内繭子さん)
 「100%ORANGE」というユニット名でも知られる2人の絵本は、「まる しかく さんかく」「ぞう ふね さんかく」「ばす れもん れもん」などページをめくるたびに、いろんな「三つのもの」が画面いっぱいに積まれています。発想の源は、及川さんがふと思いついた「積むって楽しい、ものが複数あるのってうれしい」。本能的な感覚を伝えるために、赤ちゃんが見ても分かるようなシンプルな形、色使い、絵の組み合わせに試行錯誤を重ねたといいます。

>【えほん新定番】「まる さんかく ぞう」及川賢治さん・竹内繭子さんのインタビューはこちら

3歳から小学生に贈りたい、さりげない学びのある絵本

・「くれよんのくろくん」(なかやみわさん)
 カラフルなクレヨンたちに、「せっかく描いた絵を黒くされてはたまらない」と仲間外れにされてしまう「くろくん」。そんな「くろくん」の姿が、集団生活の中で戸惑う子どものようにも読める絵本です。作者のなかやさんは、「そういう子がちょっと勇気を持てたり、逆にお友達にそういうことをしちゃっている子が『いけなかったな』って気づいてもらえたりしたらいいなって思います」と話します。

>【えほん新定番】「くれよんのくろくん」なかやみわさんのインタビューはこちら

・「おまえうまそうだな」(宮西達也さん)
 大金持ちは本当にすごいの? 豪邸に住んでいるとか、外車に乗っている人が偉いの?自らの素朴な疑問を出発点に、宮西さんが手がけた絵本です。主人公はお金やモノ、権力や名誉などの象徴として描かれるティラノサウルス。それとは対極の存在として、お金も力もない、ただ無邪気で優しい思いやりを持っているアンキロサウルスの赤ちゃんが登場します。作品を通して「人が本当に素敵だなと思うのはどっちかな」と宮西さんは問いかけます。

>【えほん新定番】「おまえうまそうだな」宮西達也さんのインタビューはこちら

「おまえうまそうだな」(ポプラ社)より
「おまえうまそうだな」(ポプラ社)より

・「だじゃれ日本一周」(長谷川義史さん)
 「きたはほっかいろ みなみはチャーシューおっきいわまで」、ページをめくれば全都道府県をだじゃれでくまなく巡ることができます。各地の名所旧跡やおいしい食べ物が描き込まれ、くだらなくて笑えるのに、自然と都道府県を覚えてしまうと評判の絵本。「最初から強制的に『覚えなさいよ』では、なんか嫌。そんなことは狙わんと、ただ悪ふざけのように作った」と作者の長谷川さんは言います。2009年の刊行から約10年で30万部に届くベストセラーです。

>【えほん新定番】「だじゃれ日本一周」長谷川義史さんのインタビューはこちら

友だちや親に贈りたい、大人の頭と心をほぐす絵本

・「ほしじいたけ ほしばあたけ」(石川基子さん)
 主人公は、山に住むほししいたけの老夫婦。さまざまなきのこと仲良く暮らす二人は、仲間の危機を救うためにある「変身」をし、ぐんぐんと強くなって――。絵本作家である大島妙子さんに「お話のくだらなさに対して絵の濃ゆさがハンパない」と言わしめたこの作品には、絵本にありがちな教訓めいたものがありません。それゆえか、大人や高齢者の読者も多く、「爆笑して“ばあさん”友だちに贈った」というファンレターが届いたこともあるそう。作者の石川さんは「乾物はいいなとか、老いも悪くないなとか、自由に感じてほしい」と話します。

>【えほん新定番】「ほしじいたけ ほしばあたけ」石川基子さんのインタビューはこちら

「ほしじいたけ ほしばあたけ」(講談社)より
「ほしじいたけ ほしばあたけ」(講談社)より

・「りんごかもしれない」(ヨシタケシンスケさん)
 今年5月、全国約12万人の小学生が選んだ「“こどもの本”総選挙」で、10位以内に4冊もの本が選ばれた人気作家のヨシタケさん。デビュー作は、ひとつのリンゴに対して主人公の「ぼく」が妄想を爆発させます。「反対側はミカンかもしれない。赤い魚が丸まっているのかもしれない。実は何かの卵かもしれない。生まれてきた何かの赤ちゃんは、僕のことをお母さんだと思うかもしれない――」。固まったものの見方をほぐすきっかけになるかもしれません。

>【えほん新定番】「りんごかもしれない」ヨシタケシンスケさんインタビューはこちら

・「あさになったのでまどをあけますよ」(荒井良二さん)
 2011年、東日本大震災が起きた年の12月に刊行された絵本です。山や海などいろんな場所に住む子どもたちが朝になると窓を開け、そこから見える景色を慈しみながら新しい1日を迎えます。カラフルな色づかいに自由奔放なタッチ、素朴な文章は震災とは無縁の印象ですが、絵本を開くと、あの時誰もが心を揺さぶられた感情や記憶がよみがえってきます。5年後に描いた『きょうはそらにまるいつき』とあわせて手元に置きたい一冊です。

>【えほん新定番】「あさになったのでまどをあけますよ」荒井良二さんのインタビューはこちら