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現代短歌の牽引者、17年ぶりの歌集

水中翼船炎上中 著者:穂村弘 出版社:講談社 ジャンル:詩歌

価格:2484円
ISBN: 9784062210560
発売⽇: 2018/05/23
サイズ: 22cm/202p

全員がアトムとウランの髪型の入学式よ光るはなびら 真夜中のスマートフォンに囁いている基地からの距離を知るため 子ども時代、昭和の終焉、母の死、そして現在…。328首を収め…

評者:保阪正康 / 朝⽇新聞掲載:2018年08月11日

水中翼船炎上中 [著]穂村弘

 17年ぶりの歌集という。
 現代短歌を牽引する歌人の生の姿が充分に窺える。
 たとえば、本書のタイトルとなっている章「水中翼船炎上中」に収められている次の歌などがそうだ。
 太陽に目を閉じている 褌で立ち泳ぎした祖父の未来よ
 あるいは、「すれちがう人が水着で自転車を漕いでいるから海なんだろう」などにこの歌人の「今」があるのだろう。この時代がどういう時代なのか、を考える感性がこうした歌に凝縮しているように思う。
 この歌集に収められている歌は328首、11の章のタイトルは「楽しい一日」とか「火星探検」だが、それは子供時代や母の死を歌っている。自らの記憶の断片や成長時の光景に強いこだわりを持ち、それを言葉に置き換え、そして今に繋げているのだろう。
 現代短歌が果たしているこの役割に、私たちは注目する必要がある。言葉は生命力を持っていると気づかされるからだ。