「障がい者の能力を戦力にする」書評 異なる者をいかに包括していくか
評者: 寺尾紗穂
/ 朝⽇新聞掲載:2018年08月25日
障がい者の能力を戦力にする 新しいカタチの「特例子会社」
著者:川島 薫
出版社:中央公論新社
ジャンル:経営・ビジネス
ISBN: 9784120050855
発売⽇: 2018/06/08
サイズ: 19cm/197p
障がい者の能力を戦力にする 新しいカタチの「特例子会社」 [著]川島薫
障がい者雇用に配慮した子会社を特例子会社というが、黒字になった会社は少ない。本書は10周年を迎えるある特例子会社が、設立から3年目に黒字になった背景を、現場を指揮してきた著者がまとめたものだ。
先天的な障がいがある著者は「究極的なことをいえば、障がい者を理解できるのは障がい者」としながらも、多様な障がい者と出会う中で、悩みつつ軌道修正してきた。後天性障がい者の心情に思いを寄せ、マニュアルどおりにだけ完璧にできる人に予定外の仕事は頼まない。一方で、できる仕事の職種を増やしていく。
楽天という恵まれた会社の関連企業であることを差し引いても、著者が経てきた試行錯誤の物語には、障がい者雇用の大きなヒントがつまっているように思う。最近は一般企業で採用後にADHDなどの障がいがわかるケースもあると聞く。異なる者をいかに包括していくか、という指南書としても多くの企業人に届いて欲しい一冊だ。