区役所で働く新人ケースワーカーの奮闘を描くテレビドラマが放送中だ。主人公は一人で110世帯を担当し、虐待や親族の扶養拒否などさまざまな背景をもつ人に対応する。大げさではない。生活保護法はじめあらゆる社会保障制度に通じていなければならず、仕事は複雑多岐に亘(わた)るのに、いきなり新人が配属されるのはほぼ実話。空回りも多いが、同僚に支えられながら成長していく姿は清々(すがすが)しい。
そんな主人公が読んでいたのが本書である。1999年の刊行以来、異動の季節によく売れるハウツー本だ。憲法が保障する国民の生存権、すなわち「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を実現する最後の砦(とりで)ともいえる生活保護を運用し、利用者の自立を助けるケースワーカーとは何者か。長年福祉畑で働いてきた先輩から後輩へのエールといえようか。
100の心得は現場での気づきや迷い、疑問に裏付けられていて説得力がある。面接でちゃんと話を聞き、記録すること。人生に責任をもつなんて勘違いをしてはならないこと。クーラーの保有を認めないという規定などないこと。民生委員や病院のソーシャルワーカー、不動産屋らとの連携が自らを助けること、等々。世帯の範囲や稼働能力の判断といった悩ましい問題への対処法も示されている。
対人支援職はとかく「いい人」と思われがちだが、だからこそ原理原則を貫き、プロ意識をもてという指摘は彼らを楽にするだろう。利口そうな顔はせず「ほんの少し抜けた顔ができるといい」だなんて、これぞ究極の「したたかに生き抜く法」(副題)ではないか。その上で利用者一人ひとりがかけがえのない存在であることを忘れない。本書を読み、仕事に誇りを感じられる人は多いはずだ。
個人的に響いたのは、自立できない人は価値の低い人と考え、利用者の頭越しに物事を進める態度を戒めるところ。老親に対する自らの態度を振り返り、反省しきりであった。
最相葉月(ノンフィクションライター)
◇
現代書館・1944円=12刷3万4千部。1999年刊行。担当編集者は「長くケースワーカーを務めた著者が、経験をもとに普遍的、客観的に助言している点が信頼を集めている」。=朝日新聞2018年9月1日掲載
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